近年の日本では、人手不足の深刻化や働き方改革の推進を背景に、限られた時間を有効に使って効率的に仕事を進めることが求められています。こうした中で、タイムマネジメントは、起業家だけでなく、ビジネスパーソンすべてが身につけておきたいスキルです。業務の生産性を向上するには、優先順位を明確にし、タスクごとに適切な時間配分をしながら、集中して仕事に取り組むことが求められます。
また、時間を効率よく使えるようになることで、プライベートの時間も確保しやすくなり、ワークライフバランスの実現にもつながります。休息や食事の時間が適切に取れることで健康を保ちやすくなるほか、家族との時間や余暇をゆっくり過ごせるようになるなど、ビジネス以外の面でも多くのメリットがあります。
この記事では、タイムマネジメントの定義、コツや手法を紹介しています。自分に合った方法を取り入れてみましょう。

タイムマネジメントとは
タイムマネジメントとは、時間を効率的に使い、生産性を高める技術や方法のことを指します。タイムマネジメントには、時間管理やスケジュール調整以外にも、自分の行動を律して時間の使い方をコントロールする能力も含まれます。
戦略的にタイムマネジメントを行うには、生産性や業務効率の向上に加え、コスト削減やワークライフバランスの実現、時間を有効に使えている実感を得ることによるストレス低減など、多くのメリットがあります。現代においては、多くの人にとって 身につけておきたいスキルと言えるでしょう。

効果的なタイムマネジメント術
- 自分の時間の使い方を知る
- 毎日のスケジュールを作成する
- 優先順位をつけ、自分でなくてもよい仕事は委任する
- タスクを細分化する
- 関連するタスクをまとめる
- 最も簡単なタスクを最初に行う
- 難しいタスクの後に簡単なタスクを追加する
- マルチタスクを避ける
- タスクの完了に十分な時間を割り当てる
- タスクに時間制限を設定する
- 定期的に休憩を取る
- あえて中途半端なところで手を止める
- 整理整頓する
- 朝早く仕事を始める
- バランスのよい朝食をとる
- 運動習慣を身につける
- 質の良い睡眠をとる
- 短めの仮眠をとる
- ポモドーロテクニックを使用する
- 目標や締め切りの設定にSMARTの法則を使用する
- ミーティングの改善
1. 自分の時間の使い方を知る
最初に、自分がどのような時間の使い方をしているかを記録し、把握することから始めましょう。時間を記録できる生産性向上アプリやメモなどを利用し、予定している仕事をすべてリストアップし、所要時間を測ります。
各タスクにどれくらい時間をかけているか可視化することで、改善や省略できる部分が見えてきます。また、予定外の仕事が入った場合にも記録をつけて、どの程度イレギュラーな業務に時間を取られているのかを確認しましょう。これにより、業務の偏りや時間の使い方の課題を把握しやすくなり、改善につなげることができます。
2. 毎日のスケジュールを作成する
毎日の活動の予定を立てることは、タスクの可視化につながり、集中力の維持や、生産性の向上に有効です。仕事以外の予定もスケジュールに入れて管理するのがおすすめです。
各タスクの所要時間を見積もり、必要な時間を区切るタイムブロッキングという手法を活用しましょう。タイムブロッキングはタスクが多く、1日のスケジュールを計画的に組む必要があるときに適しています。休憩や趣味の時間などすべてのスケジュールを反映しておくと、迷いなく作業に専念できるため、時間のロスを削減できます。
3. 優先順位をつけ、自分でなくてもよい仕事は委任する
現在抱えているタスクに優先順位をつけて、着手する順番を調整して計画を立てましょう。優先度の低いものは後に回す、もしくは切り捨てるなどの判断をします。自分でなくても対応可能な仕事は他の人に依頼したり、外注したりという選択肢も持っておくとよいでしょう。
優先順位をつけるために、アイゼンハワーマトリックスを活用してみるのもおすすめです。
これは、タスクを「緊急度」と「重要度」の2軸で4つに分類し、優先順位を付けるタスクマネジメントの手法です。
- 第1領域:緊急かつ重要。最優先で実行すべき
- 第2領域:重要だが緊急ではない。将来的に大きな成果や成長をもたらす
- 第3領域:緊急だが重要ではない。急ぎで対応すべきだが、自分の目標や成果への影響が小さい
- 第4領域:緊急でも重要でもなく、やらなくてもよい
この手法は、アメリカの元大統領ドワイト・D・アイゼンハワー氏に由来しています。重要なタスクに集中できるようになることで、生産性の向上やストレスの軽減が期待できます。
4. タスクを細分化する
時間のかかる大きなタスクは、手順ごとに小さな作業に分解して行いましょう。細分化するメリットは以下のようなものがあります。
- 業務が可視化され、見落としが発見しやすくなる
- 小さな目標が設定され、着手する心理的ハードルが下がる
- 作業を1つずつ終わらせることで達成感を得られ、モチベーションの維持につながる
- 他の人に依頼できる部分が発見される可能性がある
また、筑波大学で行われた2014年の研究では、長時間かかりそうな課題を90〜120分程度の短いタスクに細分化することで、達成率が向上したことが報告されています。この結果から、大きなタスクを細分化することで小さな目標が明確になり、取り組みやすさの向上につながることがわかります。
5. 関連するタスクをまとめる
業務を内容ごとに仕分けし、効率よく進められる類似の作業はまとめて取り組みましょう。例えば、同じソフトやツールを使用する業務をまとめて行うことで、立ち上げや片付けなど業務の切り替えにかかる時間を削減できます。
6. 最も簡単なタスクを最初に行う
難しい仕事に取り組むとき、まずタスクを複数の小さな要素に分解し、その中で最も簡単な部分から始めると着手のハードルを下げることができます。短時間で完了できるため小さな達成感が味わえ、モチベーションの向上につながります。
また、難易度が高いときでも、取り組みやすい部分から始めることで、全体の流れが見え、その後のタスクも順を追って進めやすくなります。
7. 難しいタスクの後に簡単なタスクを追加する
難易度の高いタスクの後に 、簡単なタスクを追加すると、満足度が高まり、疲労感が軽減される傾向があります。バージニア工科大学では、簡単なタスクを行うタイミングによって、作業全体の難易度の感じ方や満足感がどのように変化するかを検証する実験(英語)が行なわれました。その結果、一連の作業の最後に簡単なタスクを行った方が、全体の難易度が低く感じ、疲労感も少なくなる傾向が確認されました。難しいタスクの後に簡単な作業を行うことで、負荷が軽く感じられ、満足度の向上が期待できるため、簡単なタスクを最後に残しておくとよいでしょう。
8. マルチタスクを避ける
複雑な作業に取り組む場合は、特にマルチタスクを避け、一つの作業に集中しましょう。アメリカ心理学会の研究では、マルチタスクは作業の切り替え時に処理速度が遅くなることが示されています。そのため、作業時間の節約にはつながらず、ミスが増える可能性が指摘されており、生産時間の最大40%の損失につながる可能性があるとされています。
また、スタンフォード大学の研究によると、メールやビデオ、チャット、電話など様々なツールを利用して継続的に多くの情報を扱っている大学生は、マルチタスク作業をあまりしない学生と比べて明らかにタスク切り替え能力に関するテストのスコアが低いことが示されています。
このことから、マルチタスクはタスクの切り替え能力の低下を招く可能性があり 、シングルタスクの方が作業効率を維持しやすいと考えられます。
9. タスクの完了に十分な時間を割り当てる
ゆとりを持って時間を確保することは、タスクを確実に完了し、 仕事のクオリティの向上に役立ちます。作業時間が十分にあれば、時間の制限に対する焦りが軽減され、落ち着いて作業ができるため、ミスの発生を抑えられます。また、抜けや漏れがないか見直しをしたり、ブラッシュアップをしたりする時間も取れることで、成果物の質の向上にもつながります。
さらに、予期せぬ業務の発生やトラブルにも対応できるよう、あらかじめ余裕を持ったスケジュールを組むことも重要です。時間の余裕を確保しておくことで、不測の事態にも臨機応変に対応しやすくなります。
10. タスクに時間制限を設定する
タスクを完了するのに十分な時間を確保したうえで、あえて時間制限を設けることも生産性の向上に寄与します。時間制限を設定するメリットには、強制的な集中力の向上や、先延ばしの防止などがあります。ある研究では、残り時間を強く意識する傾向がある実験参加者ほど、作業効率が向上する事が示されています。
11. 定期的に休憩を取る
作業中に定期的に休憩を取ることで、疲労の蓄積を軽減し、作業効率を維持しやすくなります。長時間作業を続けると集中力が低下し、効率がかえって悪くなる場合もあるため、適度に休憩をとりましょう。
パーソル総合研究所のはたらく人の休憩に関する定量調査では、休憩時間が長い人、休めている実感がある人ほど、休憩後に業務へ集中して取り組める割合が高いことが示されています。一方で、休憩しない人や休めていないと感じている人ほど、プレゼンティズム(心身の健康上の問題により生産性が下がる状態)の発生割合が、休めている実感がある人よりも最大で約2倍高いという結果になりました。
これらの結果からも、適度な休憩を挟むことは、集中力の維持につながり、仕事の効率が向上することがわかります。
12. あえて中途半端なところで手を止める
着手しているタスクを区切りのよいところまで終わらせてから休憩するのではなく、未完了の状態で手を止めることで、内容が記憶に残りやすくなります。また、完了しなければならないという心理が働くため、作業に戻ってから集中力を維持しやすくなります。この現象はツァイガルニク効果と呼ばれています。
この効果を活用することで、あえて中途半端な状態で作業を中断しても、再開時にスムーズに取り組むことができ、モチベーションの向上にもつながります。
13. 整理整頓する
整った環境で作業をすると集中力が高まるため、居室やデスク周りの整理整頓を心がけましょう。散らかった環境では、ものを探したり作業スペースを確保する手間など小さな非効率が積み重なり、結果として多くの時間が無駄になります。
カリフォルニア大学の2009年の研究(英語)では、自宅が散らかっている、未完成だと感じている人は、コルチゾール(ストレスホルモン)のパターンが不健康で、抑うつ症状が強いことが示されています。
また、2014年のため込み症における認知機能のレビュー(英語)では、溜め込み症状を持つ人は、計画・問題解決の意思決定、視空間学習と記憶、持続的注意・ワーキングメモリ、および整理能力 といった領域でパフォーマンスの低下が見られることが報告されています。
14. 朝早く仕事を始める
人間の脳は、睡眠中に情報を整理するため、目覚めてから2〜3時間が比較的集中しやすい時間帯だといわれています。この時間に合わせて仕事を始めると集中力が高まり、効率的に仕事を進めやすくなります。
また、早朝は連絡も少なく、集中できる時間を確保しやすいのも特徴です。朝のうちに重要な仕事を済ませることで、トラブルや急な来客など予定外のことが発生しても余裕を持って対処できます。優先事項を決めて朝の時間に集中することで、一日の成果を最大化しやすくなります。
15. バランスのよい朝食をとる
朝にバランスのよい食事をとることも、日中の活動における集中力を高める要因の一つです。早稲田大学が行った実験では、朝食の摂取は脳のエネルギー源を維持し、集中力や作業効率を向上させることが示されています。さらに、排便の改善や正常な食欲など、健康面にも良い影響が確認されています。
脳のエネルギー源はブドウ糖ですが、これに偏って甘い菓子パンやジュースを摂取すると、消化吸収が速いため血糖値の急激な変動を引き起こします。血糖値の乱高下は、集中力の低下や強い眠気、だるさなどの原因となります。そのため主食には、血糖値を緩やかに上昇させる多糖類であるお米や食パンを選び、これに加えて食物繊維やタンパク質などをバランスよく摂取することで、集中力の向上と持続につながります。
16. 運動習慣を身につける
運動は、記憶力や創造力、注意力、集中力などの脳の機能の向上に有益であるため、日常的な運動習慣を身につけましょう。ジョージア大学の研究では、有酸素運動がワーキングメモリなどの能力を上げることが示されています。短時間の運動でも疲労感が取れるので、スキマ時間を活用することも有効です。
17. 質の良い睡眠をとる
質の良い睡眠をとることで疲労が回復し、日中の活動の生産性が維持されます。厚生労働省発行の良い睡眠の概要(案)によると、7時間前後の睡眠時間の人は、生活習慣病やうつ病の発症、さらには死亡リスクが最も低いとされています。また、成人に必要な睡眠時間はおおよそ6~8時間とされています。
また、以下のような睡眠環境づくりが推奨されています。
- 日中はできるだけ日光を浴びる
- 就寝前はスマートフォンやタブレットの使用を控え、必要に応じてナイトモードを活用する
- 38度~40度のぬるま湯 で、就寝1~2時間前に入浴をし、からだを温めてから就寝する
- できるだけ静かな環境を整え、リラックスできる寝衣・寝具で眠る
- 就寝時は照明を落とし、遮光カーテンなどを活用してできるだけ暗い環境を整える
18. 短めの仮眠をとる
休憩時や疲労を感じた時に短時間の仮眠をとることは、パフォーマンスの向上に効果的です。1994年のNASAの実験(英語)では、パイロットが休憩時に約26分間の仮眠をとったところ、認知力が34%、注意力が54%向上したと報告されています。
また、厚生労働省発行の健康づくりのための睡眠ガイド2023によると、夜勤中の20〜50分間の仮眠は、眠気や業務効率、疲労の改善に効果があることが示されています。一方、仮眠時間を60分間と長めに設定した場合、仕事の効率が低下したと報告されています。疲れを感じるときには、仮眠が効果的ですが、長すぎる仮眠は逆効果となるため注意が必要です。
さらに、仮眠の直前にコーヒーなどのカフェイン飲料を摂取するのもよいでしょう。カフェインは摂取後20分前後で覚醒作用が現れるため、仮眠後にすっきりと目覚めやすくなりだるさや眠気を感じにくくなります。
19. ポモドーロテクニックを使用する
ポモドーロテクニックとは、作業時間と休憩時間を区切って交互に繰り返すことで、集中力を維持・向上させる時間管理手法です。タイマーひとつで手軽に実践できる点も特徴です。
一般的には、25分間の作業と5 分間の休憩を1セットとし、4セットを終えたら15〜30分間の長めの休憩をとるサイクルで進めます。作業中に集中が途切れた場合は、いったんリセットしてから再開します。
実際、2023年のポモドーロテクニック効果の実証実験では、疲労が約20%減少し、注意散漫が改善され、モチベーションの向上が見られたと報告されています。
20. 目標や締め切りの設定にSMARTの法則を使用する
業務目標や締め切りを具体的に設定する際に、SMARTの法則が役立ちます。SMARTの法則は以下の5つの要素で構成されています。
- S(Specific=具体性):誰が見ても理解できる内容にする
- M(Measurable=計量性):達成度を数値などで測定できるようにする
- A(Achievable=達成可能性):現実的に達成可能な範囲で設定する
- R(Relevant=関連性):業務や目的との関連性を明確にする
- T(Time-bound=期限):達成期限を設定する
この5つの要素を踏まえて目標や締め切りを明確に設定することで、目標達成までの道筋が可視化でき、迷いなく効率的に業務を遂行できるでしょう。
21. ミーティングの改善
組織で働く場合、社内のミーティングの進め方を見直すことで業務効率を改善できる可能性があります。まずは会議が本当に必要なのか見極めることは重要です。情報共有のための開催であれば、テキストのやり取りや、資料共有によって代替できる可能性があります。
また、参加者を必要最小限に絞ることで、関係のないメンバーの時間的負担を減らし、他の作業に集中できるようになります。さらに、開催前にアジェンダや資料を共有しておくと、スムーズに本題に入ることができ、時間のロスを削減できます。
まとめ
現代では、デジタル技術の進歩やビジネスのグローバル化などによりメールやSNS、ネットニュースなど、常に多くの情報が届く状況になっており、目の前の仕事への集中力を維持するのが難しい場面も少なくありません。こうした環境の中でも、タイムマネジメントのスキルを磨くことにより、ビジネスを円滑に進め、私生活とのバランスもとりやすくなります。この記事を参考にタイムマネジメントの手法を実行してみましょう。
よくある質問
タイムマネジメントとは?
タイムマネジメントとは時間を効率的に活用し、業務の生産性を高める技術や手法のことを指します。時間管理やスケジュール調整、時間の使い方をコントロールする能力も含まれます。
タイムマネジメントのメリットは?
- 生産性の向上
- コスト削減
- ワークライフバランスの実現
- ストレスの低減
取り入れやすいタイムマネジメントの手法は?
- 整理整頓して集中しやすい環境を整える
- 適度な休憩をとる
- ポモドーロテクニックを活用する
文:Tomoyo Seki





