マーケティング施策を行っているにもかかわらず、思うように集客につながらない場合は、訴求ポイントを見直してみましょう。ここでは、訴求ポイントは何か、そしてどのようにマーケティングに活用できるかを実例を含めながら紹介します。
訴求ポイントとは?

訴求ポイントとは、自社が提供する商品やサービスについて、購入へつながる魅力やおすすめポイントを消費者に伝える表現や情報のことです。
訴求ポイントは「セールスポイント」や「USP」とも呼ばれ、デジタルマーケティング、特にECサイトの販売促進戦略において他社との差別化を図るための重要な要素となります。
訴求ポイントの種類
訴求ポイントには以下のように、主な6つの種類があります。
それぞれ異なる購買意欲に注目しているポイントで、取り扱っている商品やサービス、どのような顧客層を狙っているかによって取り入れ方や書き方が異なります。
価格訴求
価格訴求とは、商品価格が競争相手と比較してお得である点を特徴として発信する際に活用される訴求ポイントです。
割引率・最安値・送料無料などを明確に提示し、顧客が購入する際のハードルを下げることで購買意欲を刺激します。
例えば、RakutenMobileのiPhone16eキャンペーンでは、「月額1円からのスタート」とサービスの安さを全面的に押し出し、訴求ポイントを強調しています。
衝撃価格というコピーを入れることで、他社との価格比較でのブランドポジショニングを狙いながら購買意欲を高めています。
限定訴求
限定訴求は商品やサービスが今しか手に入らないという、希少性を強調することで顧客の行動を後押しする訴求ポイントです。
FOMO(Fear of Missing Out=チャンスを見逃すことへの恐れ)を盛り込んだブランド戦略で、購入を先延ばしにしがちだったり、瞬時に購入へつながらなかったりする消費者でも、即決を促せる効果があります。
漢方をベースとしたお茶やお菓子、雑貨やコスメを販売するDAYLILY(デイリリー)は、数量限定の福袋を、福袋限定バッグに入れて販売することで、顧客の購買意欲を上手に刺激しています。
ランディングページでは限定品の内容や魅力を詳しく伝えることで、単なる限定訴求に終わらず、品質や利点も訴求できています。
トレンド訴求
トレンド訴求は、購入を促したい商品やサービスが今流行しているという点を強調した訴求ポイントです。
例えば、おとなの週末お取り寄せ倶楽部ではお取り寄せを促すキャンペーンで「SNSで話題の商品」というコピーをつけています。さらに「いま話題」などの言葉を添えることで、情報感度の高い消費者の興味を引いています。
SNSでの話題・ランキング上位・人気急上昇といった表現は、自分も流行に乗り遅れたくないという購買心理が働きやすく、トレンド訴求で有効です。
ネガティブ訴求
ネガティブ訴求は、消費者が抱えている不安をあえて刺激し、商品・サービスの利点や必要性を提示する訴求ポイントです。
ネガティブ訴求では、顧客サイドに立ち、共感を示しながら、過度に不安を煽りすぎない表現を生み出すことが重要となります。
逃避訴求
逃避訴求は、顧客が日常のストレスから解放されるイメージを商品やサービスに反映させて、その魅力を伝える訴求ポイントです。
「あなたも○○で悩んでいませんか?」といった問題提起から入り、解決策として商品を提示することで、消費者は納得して購入しやすくなります。
例えば、ホームセンター通販カインズは家事にストレスを感じている顧客をターゲットに、おすすめ商品を提示するページを公開しています。これ一つで手間を減らせるというメッセージが、購入後の快適な生活を想起させ、商品への関心や購買意欲を刺激しています。
品質訴求
品質訴求は、商品やサービスの信頼性・安心感を重視する消費者に響く訴求ポイントです。強調するポイントには、素材・製造工程・耐久性・第三者評価などさまざまなものがあり、これらを具体的に示すことで顧客の信頼が得られ、消費者に購入する価値があると感じてもらいやすくなります。
ミキハウスでは、「シューズ品質実感キャンペーン」を開催し、高品質の商品を実際に試して実感してもらうアプローチをとっています。価格よりも価値を重視する層に響きやすく、品質の裏付けが購入の決め手となります。品質訴求を実践する際は、数値や実績・レビューなどの実例を活用し、客観的な根拠を持たせることが効果的です。
訴求ポイントの見つけ方

的確にパフォーマンスアップへつながる訴求ポイントを見つけるためには、幅広いデータ分析から戦略を立てることが重要です。ここでは、訴求ポイントを見つけるための3つの基本ポイントを紹介します。
1. 消費者データの分析
まずは、自社のサービス・商品がどのような消費者をターゲットにしているかを見極めましょう。年齢・性別・地域などの基本データから職業や興味まで細かくデータを分析してペルソナ設定すると、ターゲットにしている人物像が浮かびやすくなります。
さらに過去の購入データやレビュー・SNSのコメントなどを分析し、実際に既存顧客がどのような点に魅力を感じているのかも把握しましょう。
価格・使いやすさ・ブランドへの信頼感などの本音をデータから整理することで、どの訴求ポイントが消費者に響いているのかが見えてきます。
2. 自社商品・サービスの分析
次に、自社の商品・サービスの機能・価格・品質などを客観的に整理し、ターゲット層にどのような価値提案ができるのかを明確にしましょう。
自社視点での強みを、顧客の課題解決やメリットにどう結びつけられるかを意識することで、訴求ポイントとしてマーケティング戦略で活用しやすくなります。
3. 競合と市場のデータ分析
最後に、競合他社がどのような訴求ポイントを前面に出しているのか、市場全体でどのような訴求軸が多く使われているのかを把握するため、競合分析や市場分析を行います。
自社商品・サービスを差別化するために、競合と同じ訴求をするのではなく異なる切り口を強調するのが有効です。
これら3種類のデータ分析を組み合わせることで、顧客・自社・市場の視点が揃った訴求ポイントを見つけられます。
訴求ポイントの効果測定方法

訴求ポイントを見つけ、マーケティングに取り入れた後は、顧客へメッセージがどのように伝わったか、効果の評価を行うことも大切です。
効果測定をすることで、どのような点が成果へつながったのかや改善点などが見えてきます。
訴求ポイントの効果を測定する主な方法には、KPI分析と、A/Bテストによる比較検証の2つがあります。これらを組み合わせて結果を評価するのが効果的です。
KPI分析
まずは、訴求ポイントを活用した施策が、サイト全体や特定のページにどのような影響を与えたかを、KPI(重要業績評価指標)から確認しましょう。
ECサイトのKPIの中で訴求ポイントの効果測定に活用しやすい指標には、以下のようなものがあります。
- コンバージョン率:サイト訪問者のうち、ゴールとするステップ(アカウント開設・購入など)へ到達した人数の割合で、訴求ポイントが消費者の行動を喚起しているかどうかが計れます。
- 平均注文額(AOV):一取引あたりに顧客が支払った平均金額で、訴求ポイントの有無や違いによってAOVに違いが出るか分析できます。
- カート放棄率:商品をカートに追加後、購入手続きまで完了しなかった顧客の割合で、訴求ポイントの弱さが分かったり、別の訴求ポイントの活用を検討する材料になったりします。
- ページ滞在時間:訪問者がどれくらいの時間ページ上に滞在しているかを示す数値で、滞在時間が長い場合は商品に関心を持っているものの、即決できない要因があるとも考えられ、訴求ポイントの改善を検討する材料が得られます。
- クリック率:特定のページ・商品などをクリックした人数の割合で、訴求ポイントによる行動喚起の効果を測定できます。
- 返品率:訴求ポイントの効果で商品を購入したものの、利点としてうたわれていた内容と顧客が商品に対して実際に抱いた感想に落差があると返品率が高くなります。
訴求ポイントの種類によって、顧客満足度へ影響を与える指標はやや異なるため、評価に使用する指標はケースバイケースで選びましょう。
例えば、限定訴求はコンバージョン率を改善する可能性がありますが、AOVにはあまり影響しない場合があります。
A/Bテスト
訴求ポイントの影響・効果を測定するには、A/Bテストでパフォーマンスを比較するのも大切です。
訴求ポイントを使った戦略を実践したページと、実践前のページの2種類を作成し、それぞれどのように購買行動に影響があるかを比較します。
A/Bテストを設定する際は、以下のポイントに注意しましょう。
- 明確なデータを計測するために、各A/Bテストでは訴求ポイントを一つだけ活用する
- 統計的に有意な結果を得るため、十分なトラフィックが見込めるページに設定する
- 日々の変動やトレンドを考慮しながら、少なくとも1〜2週間の期間で実施する
- ShopifyのA/Bテストアプリなど、適切なツールを使用する
訴求ポイントを作る際の注意点

消費者の購買欲を刺激するために使用する訴求ポイントは、強調のしすぎ・誤った設定内容などの理由から、かえって消費者の不信感を招いてしまう結果につながる可能性があります。
新たに訴求ポイントを設定する際は、以下の点に注意しましょう。
- 膨張した表現を避ける:景品表示法違反にならないよう注意し、事実に基づいていない表現や、根拠のない断定は避け、数値やレビューなど裏付けのある情報を用いる。
- 訴求ポイントを詰め込みすぎない:一つの施策につき、訴求軸はできるだけ一つに絞り、明確にメッセージを選択する。
- ターゲット顧客を明確にする:自社の商品・サービスの消費者ペルソナに合った訴求ポイントを選定する。
- ブランドイメージとの整合性を保つ:競合相手の戦略に囚われすぎず、自社のブランドアイデンティティや価値観と矛盾しない表現に統一する。
これらを意識すると、長期的な顧客満足やブランド価値の向上につながる訴求ポイントを設計できるでしょう。
まとめ
ECサイトは実店舗と比べ、顧客の信頼性を獲得するまでに乗り越えなくてはいけないハードルが高いため、消費者の購買心理を理解してさまざまな訴求ポイントを駆使しながら販売促進戦略を立てなくてはいけません。
訴求ポイントには、価格・限定性・トレンド・不安解消・逃避・品質といった複数の訴求軸があり、ターゲット顧客層、自社、競合を分析して、最適な訴求ポイントを見つけることが大切です。商品・サービス購入時や購入後に消費者が得られる利点を訴求ポイントで提示できれば、ECサイトの売り上げなどの成果につながるでしょう。
また、訴求ポイントは一度設定した後も、KPI分析やA/Bテストを通じた結果検証・改善を続けていくことが重要です。戦略導入後のデータ分析を面倒がらず、長期的にどのような訴求ポイントが成果をあげるのかを見極めましょう。
よくある質問
訴求ポイントとは言い換えると何?
訴求ポイントとは、自社商品・サービスの魅力をより分かりやすく消費者に伝え、購入ステップへつなげるためのアピール要素のことで、「アピールポイント」「USP」などと言い換えられます。
訴求ポイントの例は?
訴求ポイントの例には、以下のようなものがあります。
- 価格訴求
- 限定訴求
- トレンド訴求
- ネガティブ訴求
- 逃避訴求
- 品質訴求
まずは自社・他社・顧客分析からはじめ、自社の商品やサービスの特性をターゲットとする消費者層に応じて、適切な訴求軸を選ぶことが重要です。
訴求ポイントを作る際のコツは?
訴求ポイントを効果的に設計するためには、以下の点を意識するとよいでしょう。
- 顧客視点での価値を考える
- はっきりしたデータ根拠の提供
- 一つの訴求軸に絞る
- ブランドとの一貫性
これらを意識することで、より成果につながりやすく長期的な信頼獲得にもつながる訴求ポイントが設計できます。
訴求ポイントを使ったコピーの書き方は?
- USPが明確に伝わるようにする。
- 消費者がその商品やサービスを利用することで得られる利点や価値を示す。
- 消費者の感情に訴えかける。
訴求ポイントを使ったコピーの例文は?
- 3つのペン先から選べる、シンプルさを極めた真っ黒なペン。(カキモリ):「3つのペン先から選べる」という消費者にとっての利点と、「シンプル」「真っ黒」というUSPを明確に伝えています。
- 世界一じゃなく、あなたの人生最高に。濃厚なのにスッと溶ける。おいしい記憶をたどり、シェフだからこその味わいを生み出す。世界へ誇るトーキョーチーズケーキを。(Mr.CHEESECAKE):「世界一じゃなく、あなたの人生最高に。」という言葉でまず感情に訴えかけ、「濃厚なのにスッと溶ける。」という商品の特徴と、それを裏付ける「シェフだからこその味わいを生み出す。」という品質訴求で他社との差別化を行っています。
文:鈴木 亜希子





