Webサイトやコンテンツに使用するフォントは、企業に対する印象を左右する重要な要素です。例えば、化粧品ブランドがモダンなフォントを選べば若々しさを演出でき、高級ジュエリーブランドがフォーマルなフォントを使えば時代に流されない印象を出せます。
だからこそ、自社に合ったコーポレートフォントを選んで使い続けることが、ブランドを構築する方法のひとつになります。この記事では、コーポレートフォントが重要な理由や種類ごとの違い、自社に合うフォントの選び方を解説します。

コーポレートフォントとは
コーポレートフォントとは、企業がブランドイメージを統一するために使うフォントのことです。コーポレートフォントを決定する際には、書体だけにとどまらず、文字の配置やサイズ、線の太さ(ウェイト)、さらに媒体ごとの運用ルールまで、詳細に設定しておく必要があります。こうした文字まわりのデザイン全般は、タイポグラフィデザインとも呼ばれます。
コーポレートフォントの使い方は、商品やサービス、企業の特徴と価値観を明確に伝えるためのブランドアイデンティティの一部としてブランドガイドラインで定めます。

コーポレートフォントが重要な理由
コーポレートフォントが重要なのは、ロゴや配色と並んで企業のイメージを決定づけるブランディング要素となるためです。使うフォントと使い方を明確に定めておくことで、読みやすさが保たれるとともに、制作物に統一感を持たせることができます。顧客は文章を読み込む前に、文字の印象から「この会社やブランドはこういうイメージ」と受け取ることができます。
あわせて、視認性の高いフォントを選び、サイズや行間のルールを決めておくと、Webサイトや商品パッケージ、社内外の資料でも、伝えたい内容が読み手に届きやすくなります。
コーポレートフォントの主な種類
1. 明朝体
明朝体は、縦線が太く横線が細いフォントです。横線の右端には「うろこ」と呼ばれる三角形の飾りがあり、線の強弱と繊細な印象が伝統や品格を感じさせます。欧文では、セリフ体が近い印象のフォントです。
長い文章でも読み疲れしにくく、書籍や新聞でも古くから使われてきました。落ち着きを求められる金融や法律、出版と相性のよいフォントです。「游明朝体」や「ヒラギノ明朝」はパソコンに標準搭載され、出版物では「リュウミン」や「秀英明朝」が使われます。

2. ゴシック体
ゴシック体は、縦線と横線の太さがほぼ均一で飾りのないフォントです。欧文のサンセリフ体が近い構造をもち、画面上でも文字がつぶれにくいため、これらを基にしたフォントがWebサイトやアプリで広く使われています。
例えばApple(アップル)が自社製品に採用している「San Francisco(サンフランシスコ)」もそのひとつで、小さい画面でも窮屈に見えないよう飾りのないフォントとなっています。Windows(ウィンドウズ)標準の「メイリオ」は「明瞭」に由来する名前のとおり文字間にゆとりがあり、「游ゴシック体」はWindowsとMac(マック)の両方に入っています。Macの「ヒラギノ角ゴシック」、駅の案内表示の「新ゴ」もよく使われます。

3. 丸ゴシック体
丸ゴシック体は、ゴシック体の線の端に丸みをつけたフォントです。角がないため柔らかい印象になり、飲食店や子ども向けのサービス、教育や医療など安心感を持ってもらいたい業種で選ばれます。代表的な書体は「じゅん」や「秀英丸ゴシック」です。

4. UDフォント
UDフォントは、誰にとっても読み間違えにくいように設計されたフォントで、UDはユニバーサルデザインの略です。濁点と半濁点を大きくし、文字の中の空間を広げることで、形の似た文字を見分けやすくしています。
このフォントは、公共交通の案内表示や金融商品の説明書で使われています。ゴシック体にも明朝体にもUDフォントがあり、「UD新ゴ」や「UD黎ミン」が代表的です。

5. 筆書体
筆書体は、毛筆で書いた線の強弱や払いを再現したフォントで、格式や和の雰囲気を出したいときに向いています。線の動きが大きく長い文章では読みにくいため、ロゴや短い見出しに絞って使います。欧文では、筆記体を基にしたスクリプト体が似た役割を持っています。

6. 手書き風フォント
手書き風フォントは、手書き文字を再現したフォントです。線の太さが一定ではなく、文字の傾きもそろっていません。筆書体ほど装飾的ではないため、親しみやすい印象や手仕事のぬくもりを感じさせます。

コーポレートフォントの使い分け
コーポレートフォントとして2〜3種類を設定して役割を分けると、読み手は見出しと本文を見分けながら読んだりと、可読性が高まります。役割は、「プライマリーフォント」と「セカンダリーフォント」で大きく分けることができます。
プライマリーフォントは、ロゴや見出しに使うフォントです。デザイン性に優れたフォントが適しており、ブランドらしさを表現する役割を持ちます。まずはプライマリーフォントから決め、それに合わせてセカンダリーフォントを選びます。
セカンダリーフォントは、本文や長い説明文に使うフォントです。読みやすさを重視し、プライマリーフォントを補完する役割があります。両者の印象が近すぎると使い分ける意味がなくなり、離れすぎると同じブランドに見えなくなる点に注意が必要です。
また、3つ目にアクセントフォントを加えるケースもあります。アクセントフォントは強調したい部分だけに絞るなど、使う機会を控えめにすることで効果を発揮します。

コーポレートフォントの選び方
ブランドパーソナリティを定義する
ブランドパーソナリティとは、ブランドを人にたとえたときの性格です。まずは伝統に根ざした高級路線なのか、業界の常識を壊していく遊び心のある路線なのかといった、自社の性格を言葉にしましょう。顧客に伝えたいブランドストーリーを明確にすることで、コーポレートフォントを選ぶときの指針になります。
フォントの使い方を調べる
Pinterest(ピンタレスト)のような画像を集めるサービスや雑誌を見て、どんなフォントがどの場面で使われているかを調べてみましょう。同業界のリーディングカンパニーなどの競合調査も効果的です。調査対象のフォントの使い方がどう優れていたかを言葉にし、自社の差別化に応用できるかを考えます。
注意したいのは、評判のよいフォントは同業他社も使っている可能性がある点です。候補を絞ったら競合のロゴやWebサイトと見比べ、見分けがつかなくならないか確認しましょう。自社のブランドポジショニングが競合と異なるなら、書体もそれに合わせて分けます。
必要な条件を洗い出す
印象が合っていても、実務で使えなければ採用できません。確認しておくべきポイントとしては、ウエイト(文字の太さ)が3種類以上用意されているか、見出しと本文の両方に使えるか、社名や商品名に必要な漢字が収録されているかなどが挙げられます。日本語の文章には英数字が混ざることもあるため、和文に混ざる欧文の大きさや位置、字間のバランスまで見比べておきましょう。
フォントを使ってみる
候補が絞れたら、実際に使う形で確かめます。完成イメージのモックアップを作ると、画面と紙で見え方の差がわかりやすくなります。パソコンとスマートフォンの両方で表示を確認し、セカンダリーフォントがプライマリーフォントより目立っていないかも見ておきましょう。
日本語の場合は、五十音と自社で実際に使う商品名を打ち込んで比べます。特定の文字だけ形が浮いて見えるフォントは、大きく表示するロゴや見出しには向きません。
ライセンスを確認する
フォントによっては用途ごとにライセンスが必要で、同じフォントをアプリとWebサイトで使うなら、それぞれに購入が必要になる場合があります。ライセンスの対象は、個別のフォントやウエイトごとであったり、類似のフォントファミリーがまとめてセットになっていたりと、提供元によって異なります。
料金は提供元やライセンスの種類、ウエイト数で変わり、Webフォントは閲覧数に応じた課金が多く見られます。和文フォントには、Morisawa Fonts(モリサワフォンツ)やLETS(レッツ)のように年間定額で複数のフォントを使えるサービスがあり、Morisawa Fontsなら8書体、24書体、全書体と、使える範囲でプランが分かれています。Noto Sans JP(ノトサンズジェーピー:英語サイト)のように無料で商用利用できるものもありますが、無料でも使える範囲はライセンスごとに異なるため、契約内容は必ず確認しましょう。

オリジナルフォントを作成する場合
オリジナルフォントは、自社のために新しく作る専用のフォントです。ほかの企業は使えないため、文字を見ただけで自社だとわかります。さらに一度作れば、ライセンス料をかけずに使い続けられます。
ただし日本語のフォントを一から作るには、ひらがなとカタカナ、漢字を合わせて数千字が必要で、欧文より制作の負担が大きくなります。費用は文字数とウエイト数で決まるため、ロゴに使う数文字だけの部分開発に対応するメーカーを選べば、全字種をそろえるより安く抑えられます。
3Dプリンターや鋳造を手掛ける株式会社JMCは、独自の「JMCゴシック」を開発しました。工業製品の型番表示などに使われてきたドイツの書体「DIN」を参考にし、鋳造品に文字を入れても潰れにくく、可読性が落ちないように設計されたフォントです。同社では、このコーポレートフォントを企業ロゴやホームページ内の各所に使用し、統一感のあるブランディングを行っています。
まとめ
コーポレートフォントは、ブランドアイデンティティを構成する一部であり、企業の印象を左右する重要な要素です。コーポレートフォントを選ぶ際には、自社の個性に合わせて候補を絞り、実際に使う形で見え方を確かめてから、慎重に決定する必要があります。また、サイズや線の太さなど、フォントの使い方のルールをブランドガイドラインで共有しておくと、ブランドの印象を一貫して保てるようになります。
ECプラットフォームのShopify(ショッピファイ)では、テーマの設定画面から多彩なフォントを選べるほか、ロゴの作成にも対応しています。無料体験も実施していますので、ぜひ一度お試しください。
コーポレートフォントに関するよくある質問
コーポレートフォントとロゴは同じ?
コーポレートフォントとロゴは、同じものではありません。コーポレートフォントには、資料やWebサイト、広告など、日常の制作物で使う場合も含まれます。一方、ロゴは企業や商品を識別するための図案で、文字を使う場合も、文字の形や間隔を個別に調整して作ることがあります。
コーポレートフォントを設定するメリットは?
- 制作物の書体がそろい、ブランドの見た目に統一感が出る
- 読みやすい書体を選ぶことで、情報を伝えやすくなる
- 書体の形や雰囲気を通じて、企業らしさを表現しやすくなる
オリジナルコーポレートフォントの作成費用は?
限定した文字セットのフォント化なら数万円~数十万円程度です。必要な文字数やウエイト数、用途、権利の範囲などで変わるため、フォントメーカーに個別で見積もってもらいましょう。




