同じ業界の関係者が集まる見本市は、一度に多数の見込み顧客や新たなビジネスパートナーと接触できる貴重な機会となります。また、意見を交わしながら交流を深めることで、生の声からトレンドやニーズなどの情報を収集することもできます。本記事では、ビジネスに見本市を活かすための、参加費用や種類、参加するメリットなどの基本知識について解説します。
見本市とは

見本市とは、特定の業界に関わる企業や関係者が集まり、最新の製品やサービスを展示・紹介したり、技術的なデモンストレーションを行ったりするためのイベントです。主要な見本市は、通常、数日間にわたって大規模なコンベンションセンターで開催されます。また地方で開催される比較的小規模な見本市もあり、地元企業はもちろん全国展開する企業にとっても、地域の見込み客や取引先と直接つながる場として活用されています。
代表的な見本市の例としては、IT・デジタル分野を中心に、最新のテクノロジーやソリューションが幅広く展示されるCEATEC(シーテック)が挙げられます。また、雑貨やギフト、ライフスタイル商品を扱う東京インターナショナル・ギフト・ショーは、メーカーや卸売業者が小売事業者やバイヤーと直接商談できる場として活用されています。
見本市の参加費用

見本市への出展を検討する上で、参加費用は重要な判断材料の一つです。出展計画を立てる際は、想定される費用対効果を踏まえ、参加の可否や達成すべき目標をあらかじめ明確にしておきましょう。
出展にかかる費用は見本市の規模や内容によって異なりますが、一般的には数十万円程度が目安となります。ただし、広い展示スペースや上位のスポンサーオプションを選択した場合には出展料だけで百万円を超えるケースもあり、また会場で目立つため展示ブースのデザインなどにこだわればさらに設備費や人件費が必要となります。主な出展費用としては、以下のような項目が挙げられます。
- 主催側に支払う出展料、展示スペースのレンタル費用
- 展示ブースのデザイン・制作費(外注する場合)
- ブース出展用の機器や資材の輸送費
- ブース担当スタッフの人件費や滞在費
- イベント向けの販促資料の制作費
- サンプル品やノベルティグッズの準備費用
なお、自社製品やサービスの紹介よりも、情報収集やネットワーク構築を主な目的とする場合には、ブースを出展せずに来場者として参加する方法もあります。この場合、必要となる費用はイベントの参加費と交通費・宿泊費に限られ、出展時と比べてコストを抑えることが可能です。
主要な見本市会場

日本国内で見本市が数多く開催されている主要な会場には、以下のような施設があります。
- 幕張メッセ(千葉県)
- 東京ビッグサイト(東京都)
- パシフィコ横浜(神奈川県)
- ポートメッセなごや(愛知県)
- インテックス大阪(大阪府)
- マリンメッセ福岡(福岡県)
見本市の種類

見本市は、テーマや対象者、開催形式などの違いによって、いくつかの種類に分類できます。主な分類方法は以下のとおりです。
業界特化型と業界横断型
見本市には、特定の業界に焦点を当てた業界特化型(垂直型)と、複数の業界に共通するテーマを扱う業界横断型(水平型)があります。業界特化型の例としては、自動車、メディカル、ファッションなど、特定の産業分野に絞った展示会が挙げられます。一方、業界横断型では、IT、営業、人事・労務、経理・財務など、業種を問わず関心を持たれやすいテーマが設定される傾向があります。
ビジネス関係者向けと一般消費者向け
B2B商材を扱う見本市は、企業の担当者などビジネス関係者の来場を想定しており、仕入れ・販売につながる商談やネットワーキング、情報交換が主な目的となります。来場者を絞り込むため、招待制を採用したり、企業情報の登録を参加条件としたりするケースも一般的です。一方、B2C商材を扱う見本市では、業界関係者に加えて一般消費者の来場も可能とされることが多く、「ジャパンモビリティショー」や「東京おもちゃショー」などがその代表例です。
講演やセッション
多くの見本市では展示ブースに加えて、主催側の企画による講演やセッションが実施されます。展示を中心とする形式だけでなく、講演やセッションを主軸に構成されるイベントも少なくありません。内容としては、外部有識者による基調講演、出展企業や業界関係者によるセッション、ワークショップ、パネルディスカッションなどが一般的です。
交流会
見本市や展示会の中には、交流会や簡単なパーティを併催するものもあります。これらは、出展者同士、あるいは出展者と来場者の関係構築を目的とした場であり、参加対象を上級管理職や意思決定者に限定するケースも見られます。
エキスポ、フェア、ショー、フェスなど
見本市や展示会には、「エキスポ」「フェア」「ショー」「フェス」など、さまざまな名称が用いられます。また、「○○展」や「○○ワールド」といった呼び方も一般的です。これらの名称に厳密な定義はありませんが、エキスポは幅広い展示を想起させる名称であり、フェアは特定分野やサブカテゴリーに焦点を当てたイベントで使われる傾向があります。ショーやフェスは一般消費者向けのイベントで用いられることが多く、パフォーマンスやアクティビティ、飲食物の提供など、幅広い来場者を引き付けるための企画が展開されることもあります。
バーチャル見本市
バーチャル見本市は、完全にオンラインで開催され、出展者と参加者がリモートで参加します。パンデミック期に急速に普及しましたが、現在も一定の需要があります。講演やセッションは配信しやすい一方、録画視聴を可能にする場合はリアルタイム開催の意義をどう設計するかが課題となります。また、対面型の体験を補うため、バーチャル展示ブースには工夫が求められます。近年では、対面とオンラインを組み合わせたハイブリッド形式も増えています。
見本市に参加するメリット

見本市は、ネットワーキングや学習、顧客層拡大の機会を得るために有効なイベントです。見込み客の獲得や受注につながるだけでなく、メディアで取り上げられたり、参加者同士の新たなつながりが生まれたりすることも期待できます。主なメリットは以下のとおりです。
- ネットワーキングの機会: 潜在的な顧客はもちろん、ビジネスパートナーやサプライヤー、流通業者と出会い、ビジネスの幅を広げる機会となります。
- 市場調査:競合他社の動向や業界トレンド、技術革新、顧客のニーズについて最新情報を把握できます。
- ブランドの認知度向上:多くの来場者に製品やサービスを紹介できるとともに、大々的に製品や技術をアピールして業界内でのポジショニングを行うこともできます。メディア露出やPRの機会につながる場合もあります。
- 販売とリード獲得:ポップアップストアのようにその場で販売や商談を行うほか、将来の取引につながる見込み客の連絡先情報を収集することもできます。また来場者側として、仕入れる商品を実際に確認できる機会にもなります。
- 製品フィードバックの獲得:来場者から直接意見や反応を得ることで、製品やサービスの改善に役立てることができます。
- 学習・教育の機会:業界の専門家や有識者による講演やセッションを通じて、新たな知識や視点を得られます。
- インスピレーションと革新:他社の取り組みや新しい発想に触れることで、自社の製品やソリューションを改善するヒントを得ることができます。
見本市で行われる企画

見本市は、一般的に次のような企画・内容で構成されています。
- 展示スペース
- ワークショップやプレゼンテーション
- 業界関係者やメディアとの交流の機会
- パーティなどのネットワーキングイベント
- 出展者同士のプライベートな交流会
- 開会式・閉会式・表彰式
- イベント公式サイト上での企業・製品紹介
出展者は、潜在的な新規顧客との接点を持ち、ディーラーや流通業者との関係を強化するとともに、インフルエンサーやメディアとのネットワーキングの機会を目的として見本市に参加します。一方で来場者は、最新の製品やサービスに触れて仕入れる商品を検討したり、出展者による特別な「見本市価格」で商品を購入したりしながら、業界や市場への理解を深めるために見本市を訪れます。
まとめ
見本市は、多様な製品やサービス、新たな技術が一堂に集まるとともに、顧客やパートナーとの接点を広げたり、市場動向を把握できたりする有効なビジネスの場です。種類や開催形式、費用はさまざまですが、出展する際には自社の目的に合った見本市を選び、参加方法を工夫することで限られた予算でも十分な成果が期待できます。またECサイトの運営者も、仕入れ先や新商品を見つけるために来場者として参加しています。見本市の特性を理解した上で、戦略的に活用することが重要です。
見本市に関するよくある質問
見本市にはどのような名称がある?
見本市や展示会には、「エキスポ(EXPO)」「フェア」「ショー」「フェス」など、さまざまな名称があります。これらに厳密な定義の違いはありませんが、エキスポは幅広い分野を網羅する大規模展示、フェアは特定分野に焦点を当てた催し、ショーやフェスは一般消費者向けのイベントで使われることが多い名称です。
見本市とは?
見本市とは、製品やサービスを展示・紹介し、来場者との商談や情報交換を行うために開催されるイベントです。企業は新規顧客の獲得や関係構築を目的に出展し、来場者は最新情報の収集や比較検討を行います。業界向け・一般向けなど、目的に応じて形式はさまざまです。
見本市に出展したら何をするべき?
見本市では、単に製品を展示するだけでなく、来場者との対話を通じてニーズを把握し、将来につながる関係を築くことが重要です。あらかじめ目的を定め、ターゲットに合わせた説明や資料を準備することで、商談や情報収集といった成果につながりやすくなります。
見本市に参加するメリットは?
見本市に参加することで、顧客やパートナーとのネットワーキング、市場動向の把握、ブランド認知の向上といった多様な効果が期待できます。直接対話によるフィードバックを得られる点も特徴で、販売やリード獲得だけでなく、中長期的なビジネス機会の創出につながります。
見本市のブースとポップアップストアの違いは?
展示会ブースとポップアップストアはいずれも限られたスペースで商品やブランドを訴求しますが、目的が異なります。ポップアップは即時販売を重視するのに対し、見本市のブースは見込み客との関係構築が主眼です。そのため商品展示よりも、特徴や強みを伝える資料や説明の工夫が重視されます。
文:Norio Aoki





