ECサイトでは、CTAの設計がクリック率や購入率に大きく影響します。テキストや配置、デザインを少し見直すだけでも、CVR(コンバージョン率)が改善するケースは少なくありません。
本記事では、CTAとは何か、ECサイトでクリックされやすいCTAの書き方、成功事例などを紹介します。ECサイトの成果を伸ばしたい企業は、ぜひ参考にしてください。
CTAとは

CTA(コールトゥアクション)とは、ECサイトやWeb広告などにおいて、ユーザーに特定の行動を促すために設置されるボタン、リンク、テキストのことです。具体的には「今すぐ購入」や「資料をダウンロード」などの文言がCTAにあたり、クリックすることで該当するページや次のステップへ誘導する重要な「接点」となります。
ECサイトのCTAの種類
ECサイトで使われる主なCTAは以下の通りです。
- 購入する:商品の購入を促すCTA。
- 商品を見る:商品ページやコレクションページへ誘導するCTA。
- 詳しく見る:解説記事や比較ページへ誘導するCTA。
- 会員登録する:アカウント作成を促すCTA。
- 定期購読する:メルマガの登録を促すCTA。
マーケティングコンテンツに含めるCTAの数
CTAの適切な数は、コンテンツの種類によって異なりますが、たとえば、メールキャンペーンではCTAは1つに絞るのが基本です。行動をひとつに限定することで、ユーザーが迷いにくくなり、メッセージの理解度や読みやすさが向上します。あわせて、クリック率やコンバージョン率の測定もしやすくなります。
一方で、ブログ記事などのコンテンツでは、主CTAと補助的なCTAを設置することも可能です。たとえば、「商品購入」を主CTAとしつつ、「関連するブログ記事の閲覧」や「メルマガ登録」といった別の行動を促すCTAを併設するケースが考えられます。数や配置が適切かどうかは、A/Bテストを通じて検証しましょう。
ECサイトのCTAの書き方

1. ファネルの段階を考慮する
マーケティングファネルの段階に応じて、顧客に取ってもらいたい行動は異なるため、接点ごとに最適なCTAを設置することが重要です。たとえば、ブランドや商品を認知する段階の顧客との接点となるブログ記事では、「商品を見る」や「詳しく見る」といったCTAが適しています。一方、メルマガ登録者やリピーターとの接点となる商品ページやキャンペーンページでは、「購入する」や「カートに入れる」といったCTAが効果的です。
ページや施策がどの段階の顧客を対象としているかを明確にし、それに合ったCTAを設計しましょう。
2. 負担を低くする
見込み顧客に対しては、行動のハードルを下げることが重要です。時間、費用、個人情報入力の負担が少ないCTAほど、クリックされやすくなります。
たとえば、初回限定の割引や特典の提示、メルマガ登録と引き換えのクーポン提供などの施策が考えられます。入口となるCTAをきっかけに、商品ページや購入導線へつなげていきましょう。
3. 緊急性を打ち出す
CTAに緊急性を持たせることで、「今行動しないと機会を逃す」と顧客に感じてもらうことができ、購入やクリックを後押しできます。緊急性を伝える主な方法は以下の通りです。
- 在庫が残りわずかであることを表示する
- 期間限定セールやキャンペーンを告知する
- カウントダウンや締切日時を明示する
たとえば、「残り1点」という一文をCTAの近くに表示することで、今行動する必要性が伝わり、クリックにつながりやすくなります。
ただし、常に強い緊急性を打ち出すと、信頼を損なうおそれがあります。実際の在庫状況や期間に基づき、適切なタイミングで活用しましょう。
4. 色やデザインをテストする
CTAに適した色やデザインはブランドやページの作りによって異なるため、A/Bテストを通じて検証することが重要です。複数パターンを用意し、成果につながる組み合わせを確認しましょう。
検討する際は、以下のポイントを意識します。
- CTAの周囲に余白を設け、クリックできる要素であることを明確にする。
- ページ全体の中で目立つ、高いコントラストの色を選ぶ
- フォントの太さやサイズ、影などの装飾も調整する。
ブランドイメージを保ちながら、視認性を高めることがCTA改善のポイントです。
5. シンプルにする
CTAは、一目で内容が伝わるようシンプルに設計することが重要です。複雑な表現や長い説明文は、判断を迷わせ、クリック率の低下につながるおそれがあります。「購入する」「商品を見る」など、次に取ってほしい行動が直感的に分かる言葉を使いましょう。
テキストとデザインの両面をシンプルに保ち、どこをクリックすればよいか、クリックすると何が起きるのか、瞬時に分かる状態を目指しましょう。
6. 画像を活用する
CTAは、ボタンやテキストだけでなく、画像を使うこともできます。特に、トップページや特集ページでは、ヒーローイメージをCTAとして活用することで、視覚的に行動を促しやすくなります。たとえば、商品やコレクションを訴求する画像にリンクを設定し、該当のページへ遷移させる方法が考えられます。
画像だけでは次の行動が分かりにくい場合は、画像上にCTAボタンを設置したり、画像の近くにテキストを添えたりして、クリック後の展開が直感的に把握できるようにしましょう。
7. ファーストビューに配置する
CTAはページを開いてすぐに表示される領域であるファーストビューに設置することで、訪問直後に次の行動を明確に示せます。その結果、クリックやページ回遊につながりやすくなります。
どんなページなのか、ユーザーに何をしてほしいのかがひと目で分かる構成を意識しましょう。たとえば、トップページ上部のメインビジュアル付近に「商品を見る」「キャンペーンを見る」といったCTAを配置し、目的のページへ直接遷移できるようにします。
ページを開いた瞬間に行動へ移れる導線を用意することが、成果の改善につながります。
効果的なECサイトのCTA10例
1. オリオンビール
オリオンビールの公式ECサイトでは、商品ページに「カートに追加する」ボタンが設置されています。このCTAは、購入を検討しているユーザーを次のプロセスへ進ませることを目的としたものです。クリックすると、商品がショッピングカートに追加されます。
商品名、価格、レビュー評価を確認し終えた後の「視線の流れ」に沿ってCTAを配置することで、ユーザーが購入を検討したタイミングで、迷わず次の行動に移れる設計になっています。また、ボタンには明るい黄色が使われており、白と青を基調としたサイトの中で強いコントラストを生み出しています。この色使いは、ビールの黄金色を連想させる点でも、ブランドイメージとの親和性が高いと言えます。
さらに、テキストは「購入する」ではなく「カートに追加する」となっており、まずはカートに入れて検討したい、というユーザーの心理に寄り添い、行動のハードルを下げています。
2. 日清食品
日清食品の公式ECサイトでは、ストアトップページに「お友達紹介キャンペーン」(2025年12月1日〜2026年3月27日まで)の画像が設置されています。このCTAは、新規ユーザーの獲得を目的としたもので、クリックするとキャンペーンの詳細ページへ移動します。
ファーストビューに設置されているため、いま注目すべきキャンペーンであることを訪問直後に伝えています。また、「紹介してくれたあなたとお友達に特典プレゼント」というテキストで、行動に伴うメリットを明確に示し、参加に対する心理的なハードルを下げています。
さらに、キャンペーン期間をあわせて記載することで、「今やらないと機会を逃す」という緊急性を持たせ、クリックを促進しています。
3. カンロ
カンロ公式ECサイトでは、売り切れ商品ページに「再入荷通知をする」ボタンが設置されています。このCTAは、購入できなかったユーザーを離脱させず、次の購入機会につなげることを目的としたものです。クリックするとメールアドレス登録フォームが開きます。
「Sold Out」表示のそばに配置することで、購入できなかったユーザーが「再入荷通知を登録する」という、自然な導線を作っています。また、「再入荷通知をする」というテキストは、金銭負担が伴わないので心理的なハードルが低く、行動を促しやすいのが特徴です。
さらに、本商品が数量限定、期間限定であることを明記することで、「購入できる可能性を確保したい」というユーザー心理に効果的に訴求しています。
4. Soup Stock Tokyo
Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー)の公式ECサイトでは、ギフト商品ページに「住所を知らない相手にeギフトで贈る」ボタンが設置されています。このCTAは、ギフト利用を促進し、購入シーンを広げることを目的としたものです。クリックするとeギフト用のメッセージや送り主名を入力する画面が表示されます。
「eギフトで贈る」ボタンは、通常の購入CTAである「カートに追加する」の下に配置されており、購入を検討しているユーザーの目に自然に入る設計になっています。また、サイトの基調色が白と黒で統一されている中で、eギフトのCTAには明るいグリーンが使われ、視覚的にも目立つ設計です。このカラーは、eギフトサービス提供元であるAnyGift(エニーギフト)のブランドロゴに合わせたものです。「AnyGiftのeギフトとは?」リンクも併記されており、eギフト購入フローについて事前に確認できるようになっています。
さらに、「住所を知らない相手に」という一文を追加する事で、「相手の住所が分からない」というギフト購入時の不安や手間を見事に解消しています。これにより、心理的ハードルを下げ、購入行動へとつなげやすくしています。
5. YZ STORE
YZ STORE(ワイジーストア)の商品ページでは、「店舗在庫を確認する」ボタンが設置されています。このCTAは、実店舗での購入も含めて検討できるようにし、購入判断の幅を広げることを目的としたものです。クリックすると、店舗ごとの在庫状況が表示されます。
オンライン上でのサイズ選択に不安がある場合や、一部サイズが欠けている場合でも、「店舗で確認する」という次の選択肢を提示することで、ユーザーを離脱させずにすみます。また、塗りつぶしのないシンプルなボタンとして設計されていて、メインのCTAである「カートに入れる」ボタンを邪魔していません。
さらに、「店舗在庫を確認する」という具体的なテキストにより、クリック後に何が起きるのかが直感的に分かります。実店舗も展開するブランドにとって、オンラインとオフラインをつなぎ、購入機会を逃さないための有効なCTAだと言えるでしょう。
6. 土屋鞄製作所
土屋鞄製作所の公式ECサイトでは、サイト訪問後に表示されるポップアップ内に「メルマガ会員になる(無料)」ボタンが設置されています。このCTAは、ユーザーと継続的な接点を持つことを目的としたものです。クリックすると、メールアドレス入力画面が表示されます。
サイト閲覧中にモーダル形式でCTAを表示することで、ページ内の他要素から視線を切り離し、特定の行動に集中させやすい設計になっています。また、サイト全体の落ち着いたトーンに合わせて、CTAボタンには深いブルーが使われており、派手さを抑えつつも十分に目立つ配色になっています。
テキストも「メルマガ会員になる(無料)」と簡潔で、「何をするのか」「費用がかからないこと」が一目で分かります。これにより、クリックに対する心理的なハードルを下げています。さらに、ボタンの下にはInstagram(インスタグラム)やLINE(ライン)での会員登録導線が配置されており、メール登録に抵抗のあるユーザーも取りこぼさない設計となっています。
7. WEGO
WEGOの公式ECサイトでは、会員登録を促すポップアップ内に「次へ」ボタンが設置されています。このCTAは、ユーザーをスムーズに会員登録へ導くことを目的としています。クリックすると、会員登録によって得られる特典やメリットが段階的に紹介される構成になっています。
一方で、ポップアップ内の画像をタップすると、そのまま会員登録画面へ直接進むことも可能です。「会員登録またはログインは上の画像をタップ」というテキストを記載することで、「次へ」ボタンを押さなくても登録に進めることが分かり、操作に迷いにくい設計になっています。
特典を確認してから登録するか、すぐに会員登録へ進むかという2つの選択肢を用意することで、ユーザーを急かす印象を与えず、会員登録に対する心理的なハードルを下げています。これにより、ユーザーの意思に合わせて行動へとつなげるCTAが実現しています。
8. COHINA
COHINA(コヒナ)の公式ECサイトでは、トップページのファーストビューに「はじめての方はこちら」ボタンが設置されています。このCTAは、初めてサイトを訪れたユーザーに向けて、ストアへの理解を深めてもらうことを目的としたものです。クリックすると、COHINAのコンセプトを解説する専用ページへ移動します。
ボタンはストア全体のトーンに合わせた落ち着いたベージュカラーですが、ヒーローイメージ直下という視認性の高い位置と、大きめのボタンサイズによって、主張しすぎず自然に目に入るデザインになっています。
さらに、遷移先のページではブランド解説と合わせて、初回注文限定の1,000円オフクーポンコードが掲載されています。いきなり商品購入を促すのではなく、CTAから「ブランド理解・特典提示・購入」という流れを設計することで、初回購入の心理的ハードルを下げています。
9. ダイソー
ダイソーネットストアでは、商品紹介YouTube(ユーチューブ)動画の下部に「YouTubeをみる」ボタンが設置されています。このCTAは、商品紹介動画の視聴やチャンネル登録を促すことを目的としたものです。クリックすると、公式YouTubeチャンネルへ遷移します。
人気商品ランキングや新着商品一覧を見終えた後の導線上に「動画案内」を配置することで、「まだ購入に踏み切れない」「実際の使用感を知りたい」と感じたユーザーに対して、次の判断材料を自然に提示しています。動画で購入前の不安を解消できるうえ、チャンネル登録を通じた継続的な接点づくりにもつながります。
デザイン面では、ダイソーのブランドカラーであるビビッドなピンクを使用しており、ボタン自体は小さめながら、ページ内でしっかりと視認できます。「YouTubeをみる」という文言もシンプルで、クリック後に何が起きるのかが直感的に理解できます。
10. 生活の木
生活の木の公式ECサイトでは、トップページに掲載されている商品プロモーションイメージ上に「More」ボタンが設置されています。このCTAは、商品についての理解を深めてもらうことを目的としたもので、クリックすると該当商品の紹介ページへ移動します。
バナー画像自体もクリック可能な要素として機能していますが、あわせてCTAボタンを画像内に配置することで、「ここから詳細を確認できること」を視覚的に示しています。これにより、ユーザーに自然なクリックを促しています。
また、ボタンにはストアのメインカラーである淡いグレーが採用されており、商品バナーの雰囲気を邪魔しないデザインになっています。強く主張するCTAではなく、詳しく知りたい人が自然に次へ進める導線として機能している点が特徴です。
まとめ
CTAは、ユーザーが行動を起こすきっかけとなる要素であり、ECサイトでは各ページの役割を意識して設計することが重要です。「購入を促す」「商品やブランドへの理解を深める」「会員登録の案内」など、ページの目的に応じたCTAを配置することで、ユーザー体験を損なうことなく成果につなげることができます。
クリックされやすいCTAには、目的に合ったテキストや配置、デザインの工夫があります。「ユーザーに何をしてほしいのか」を整理し、CTAがその役割を十分に果たしているかを見直すことが、改善への第一歩となるでしょう。
よくある質問
CTAとは?
CTAとは、ユーザーに特定の行動を促すためのボタンやリンクのことです。これをクリックすることで、購入や会員登録など、具体的な行動につながるページへと遷移します。
ECサイトのCTAの種類は?
ECサイトでは、主に以下のようなCTAが使われます。
- 購入する
- 商品を見る
- 詳しく見る
- 会員登録する
- 定期購読する
ECサイトのCTAの書き方は?
ECサイトで効果的なCTAを作成するには、以下のポイントを意識しましょう。
- ファネルの段階を考慮する
- 負担を低くする
- 緊急性を打ち出す
- 色やデザインをテストする
- シンプルにする
- 画像を活用する
- ファーストビューに配置する
CTAの例として参考になるECサイトは?
ページごとの目的に応じたCTA設計が参考になるECサイトの例は以下の通りです。
- オリオンビール
- 日清食品
- カンロ
- Soup Stock Tokyo
- YZ STORE
- 土屋鞄製作所
- WEGO
- COHINA
- ダイソー
- 生活の木
文:Hisato Zukeran





