はじめに
「電話・FAX・メールで受けている卸の受発注をECに移したい。ただ、何から手をつけるかが見えない」
「得意先別の掛率や最小ロットを再現できるプラットフォームが見つからない」
「承認フロー、与信、請求書払いといった卸特有の業務に、ECが本当に対応できるのか」
BtoB卸売ECの導入を検討する企業からは、このような悩みが多く聞かれます。
BtoB卸売ECは、どの業務をEC化し、どの業務を既存システムや営業担当者に残すのかを整理したうえで、プラットフォームを選ぶことが重要です。
経済産業省の電子商取引に関する市場調査では、国内BtoB-EC市場規模は465.2兆円、EC化率は40.0%に達しています。
BtoB取引のデジタル化はすでに大きな市場となっており、卸売業でも受発注のEC化を検討する企業が増えています。
本記事では、BtoB卸売ECの定義と市場動向から、卸売業に必要な業務要件、プラットフォームの選定方法、代表的なサービスの比較、導入手順、失敗しやすいポイント、費用相場、投資回収の考え方までを詳しく解説します。
「卸売 ECサイト」「BtoB 卸 プラットフォーム」「卸 受発注 EC」などのキーワードで情報収集している方にも、自社で検討を進めるための判断材料として活用できる内容です。
BtoB卸売ECの導入を検討しているものの、「自社の複雑な卸売業務をEC化できるのか」「どのプラットフォームを選べばいいのか」とお悩みではありませんか?
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BtoB EC完全ガイド|機能要件・構築方法・成功のポイントを徹底解説
1. BtoB卸売ECとは:定義と一般BtoB-ECとの違い
BtoB卸売ECと一般的なBtoB-ECは、どちらも法人向けのECですが、必要となる機能や運用方法には大きな違いがあります。
特に卸売業では、取引先との継続的な商談や個別契約を前提とすることが多く、販売価格や発注条件を一律に設定できません。
まずはBtoB卸売ECとは何なのか、BtoC ECや一般的なBtoB-ECと何が違うのかを整理しましょう。
1-1. BtoB卸売ECの定義
BtoB卸売ECとは、メーカーや卸売事業者が、小売店、代理店、販売店、飲食店などの法人顧客に対して、Webサイト上で商品の受発注を行えるようにする仕組みです。
BtoC ECでは一般消費者が商品を選び、クレジットカードなどで購入する形が一般的です。一方、BtoB卸売ECでは、法人バイヤーが仕入れを目的として利用し、取引先ごとの価格や発注条件に基づいて注文します。
たとえば、次のような事業者がBtoB卸売ECの代表的な利用企業です。
-
アパレルメーカーが小売店・セレクトショップに商品を卸す
-
食品メーカーが飲食店・小売チェーンに商品を卸す
-
化粧品ブランドが百貨店・量販店・サロンに商品を卸す
-
工業部品メーカーが商社・代理店に商品を卸す
-
雑貨メーカーが小売店・ECモール出店者に商品を卸す
これらの取引では、商品を1個購入して終わるのではなく、継続的に同じ取引先から注文が入ります。
そのため、BtoB卸売ECでは商品ページの見せ方だけでなく、取引先情報、価格、在庫、発注履歴、支払い条件などを一体的に管理できることが重要です。
また、既存取引先が中心となる場合は、一般的なECのように広告を使って大量の新規顧客を獲得することだけが目的ではありません。
既存顧客が電話やFAXからECへ移行しやすい環境をつくり、発注頻度を高めたり、営業担当者がより付加価値の高い業務に時間を使えるようにしたりすることも、BtoB卸売ECの重要な目的です。
1-2. BtoCのECサイトとの根本的な違い
BtoC ECとBtoB卸売ECでは、購入者も購入目的も異なります。
BtoCでは、不特定多数の消費者が同じ商品ページを見て、基本的には同じ販売価格で購入します。一方、BtoB卸売ECでは、ログインする取引先によって表示価格や商品、発注条件が変わることがあります。
|
項目 |
BtoC EC |
BtoB卸売EC |
|---|---|---|
|
主な購入者 |
個人消費者 |
法人バイヤー(仕入担当者) |
|
価格表示 |
全員に同一価格 |
取引先別の卸価格・掛率 |
|
発注単位 |
1点から |
最小ロット(MOQ)あり |
|
決済方法 |
クレジットカード・前払いが中心 |
請求書払い(締め支払い)が中心 |
|
与信 |
不要(前払い前提) |
必須(売掛・与信枠管理) |
|
承認 |
個人判断 |
上長承認・購買部門承認 |
|
受発注フォーマット |
Webカートのみ |
見積依頼・注文書・受領書など多形態 |
|
配送 |
個別配送 |
まとめ納品・指定納品日 |
この違いを理解せず、既存のBtoC ECサイトをそのままBtoB卸売に流用すると、現場の業務に合わない可能性があります。
たとえば、商品をカートに入れるところまでは問題なくても、取引先ごとの掛率を反映できない、ケース単位でしか注文できない商品を1個から購入できてしまう、請求書払いに対応できない、といった問題が発生します。
したがって、BtoB卸売ECではECサイトそのものだけではなく、受注から出荷、請求、入金管理までを含めた業務全体を設計する必要があります。
1-3. 一般BtoB-ECと卸売ECの違い
BtoB-ECという言葉には、さまざまなタイプのサービスが含まれます。
法人向けに文具や備品を販売するECと、メーカーが数百社の小売店へ継続的に商品を卸すECでは、必要な仕組みが大きく異なります。
|
BtoB-ECの類型 |
主な対象 |
特徴 |
|---|---|---|
|
卸売EC(本記事の対象) |
取引先小売・代理店 |
取引先別価格、与信、ロット、継続発注 |
|
業務用品EC(スポット型) |
法人購買担当 |
カタログ販売、都度決済、価格は標準的 |
|
マーケットプレイス型BtoB |
不特定の法人 |
出店者×購買者のマッチング |
|
製造業向け受発注EC |
部品商社・製造業 |
個別見積、図面・仕様書取り扱い |
卸売ECでは、すでに取引関係のある企業が主要な顧客になることが多いため、新規集客だけを重視する必要はありません。
むしろ、現在営業担当者が電話やメールで受けている注文をECに移行し、注文履歴や購入データを蓄積しながら、取引先が必要な商品をスムーズに発注できる環境を整えることが重要です。
そのうえで、新規取引先向けの問い合わせフォームや資料請求、サンプル申込、営業商談などをECサイトと組み合わせれば、既存取引の効率化と新規顧客獲得を両立できます。
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卸売ECに必要な業務・システム要件を整理する際は、「ECサイト要件定義ガイド」も参考にしてください。
ECサイト要件定義の進め方|RFP作成・要件定義書テンプレ・落とし穴
2. BtoB卸売EC市場の動向と背景
BtoB卸売ECを導入するか検討する際は、単にECサイトを導入することだけではなく、市場全体がどの方向に進んでいるのかも確認しておきましょう。
2-1. BtoB-EC市場規模の拡大
経済産業省の電子商取引に関する市場調査では、国内BtoB-EC市場規模は約465.2兆円、EC化率は40.0%とされています。
BtoC-EC市場と比較してもBtoB-ECは非常に大きな市場であり、企業間取引におけるデジタル化が進んでいることが分かります。
一方で、すべての業種でEC化が同じスピードで進んでいるわけではありません。
製造業などでは電子データを使った企業間取引が進んでいる一方、卸売業の一部では、電話、FAX、メール、Excelなどを組み合わせた受発注が現在も残っています。
これは卸売取引が長年の商習慣や個別契約によって成り立っているためです。
しかし、既存の商習慣をすべて変える必要はありません。
重要なのは、現在の取引条件を整理したうえで、ECに向いている業務から段階的にデジタル化することです。
2-2. 卸売EC化を後押しする5つの背景
卸売業でEC化が進む背景には、複数の要因があります。
-
受発注の人手不足
電話・FAX・メールで受けた注文を担当者が販売管理システムへ入力する場合、受注件数が増えるほど事務作業も増加します。EC化によって取引先自身が注文情報を入力すれば、転記作業や入力ミスの削減につながります。 -
取引先側のデジタル化要求
小売チェーンやEC事業者など、取引先自身がデジタル化を進めているケースも増えています。受注側だけでなく発注側の業務効率化が求められるため、Web発注に対応できること自体が取引上の要件になる可能性があります。 -
24時間発注ニーズ
店舗やECショップの運営担当者は、営業時間中だけに仕入れ作業をするとは限りません。ECであれば営業時間外でも注文を受け付けられるため、取引先にとって発注の自由度が高まります。 -
インボイス・電帳法対応
請求書や取引情報の電子化が進むなか、受注データと販売管理・請求業務を連携させることで、紙やExcelを中心とした管理から移行しやすくなります。 -
海外展開の選択肢
海外のバイヤーとの取引を増やしたい企業にとって、多言語・多通貨に対応したECは営業チャネルのひとつになります。越境B2Bを検討する場合は、国内向けの要件だけでなく将来的な拡張性も確認しておく必要があります。
2-3. 卸売EC化で得られる主な効果
BtoB卸売ECのメリットは、主に3つの方向から考えられます。
-
業務効率化:受発注の自動化、転記作業の削減、入力ミスの削減、問い合わせ工数の削減
-
売上機会の拡大:24時間発注、追加注文のしやすさ、新規取引先への接点づくり
-
データ活用:取引先別の購買履歴、商品別の販売状況、在庫データなどの蓄積
特に既存顧客の注文をECへ移行できれば、営業担当者が注文を受けるだけの時間を減らし、新規提案や休眠顧客へのフォローなど、売上につながる活動へ時間を振り向けられます。
ただし、EC化しただけで自動的に売上が増えるわけではありません。
導入後は、取引先にECを使ってもらうための案内、ログイン支援、注文方法の説明、定期的な利用促進などが必要です。
そのため、BtoB卸売ECではシステム導入と同時に、取引先をECへ移行させるオンボーディング施策まで計画しておくことが重要です。
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BtoB卸売ECの基本から業務要件、プラットフォーム選定まで詳しく知りたい方は、「BtoB卸売ECガイド」もご覧ください。
BtoB卸売ECの完全ガイド|業務要件・プラットフォーム選定・導入手順を徹底解説
3. 卸売ECで求められる11の業務要件
BtoB卸売ECの成否を左右するのが、業務要件の整理です。
BtoC向けECでは標準的な機能でも、卸売では条件設定が複雑になることがあります。
ここでは、導入前に確認しておきたい11の代表的な業務要件を紹介します。
3-1. 顧客別価格・掛率
卸売ECで特に重要なのが、取引先ごとの販売価格を管理する機能です。
たとえば、
-
取引先Aには定価の50%で販売
-
取引先Bには55%で販売し、一定数量以上は53%
-
新規取引先には標準掛率を適用
-
長期取引先には個別契約価格を適用
といった条件があります。
この場合、すべての顧客に同じ価格を表示する一般的なECでは対応できません。
ログインした企業によって表示価格を変更できることに加え、商品カテゴリー、数量、契約条件などを組み合わせて価格を設定できるかも確認しましょう。
Shopifyを含むプラットフォームを検討する際も、標準機能だけで実現できる部分と、アプリや追加開発が必要な部分を切り分けて確認することが重要です。
3-2. 最小発注ロット(MOQ)・発注単位
卸売では、1個単位ではなくケース、ボール、ダースなどの単位で発注する商品があります。
たとえば、
-
商品Aは24個入り1ケースから
-
商品Bは1個単位だが最低10個から
-
商品CはMサイズのみ12点単位、その他サイズは6点単位
などです。
ECサイト側でロット条件を正しく制御できなければ、実際には出荷できない注文が入ってしまいます。
そのため、商品ごとの最小数量だけでなく、増加単位、ケース入数、サイズ別条件などまで確認しておく必要があります。
3-3. 承認フロー(購買承認)
法人取引では、担当者が自由に注文を確定できるとは限りません。
担当者がカートに商品を入れ、上長が承認してから正式発注する企業もあります。
代表的なフローは以下のとおりです。
-
担当者がカートへ商品を登録
-
上長へ承認依頼
-
上長が内容を確認
-
承認後に注文確定
また、一定金額以上の発注だけ承認が必要になるケースもあります。
このような運用では、企業アカウント、拠点、ユーザー権限、承認者などを管理できることが重要です。
3-4. 与信・売掛管理
請求書払いを採用する場合、取引先ごとの与信管理が必要です。
たとえば、月間の与信枠を100万円に設定している場合、すでに80万円の売掛がある企業から30万円の注文が入れば、与信枠を超過します。
このような場合に、
-
注文をブロックする
-
管理者へアラートを出す
-
営業担当者の確認を挟む
-
別の決済方法へ切り替える
といった処理が必要になります。
ECだけで与信管理を完結させるのではなく、外部の後払い・売掛保証サービスや販売管理システムと連携する方法も検討しましょう。
3-5. 請求書払い・締め支払い
卸売取引では、月末締め翌月末払い、20日締め翌月10日払いなど、取引先ごとに異なる支払い条件が設定されることがあります。
そのため、BtoB卸売ECでは決済方法だけでなく、請求業務まで考慮する必要があります。
具体的には、
-
取引先別の締め日・支払日の管理
-
複数注文をまとめた請求
-
請求書の発行
-
売掛残高の管理
-
入金消込
などが挙げられます。
クレジットカード、銀行振込、口座振替、後払いなど複数の決済手段を組み合わせる場合は、どの処理をEC側で行い、どこから販売管理・会計システムへ渡すのかを事前に整理しておきましょう。
3-6. 見積依頼・注文書フロー
卸売では、すべての商品をカートから即注文するとは限りません。
特注商品や大口注文では、
見積依頼 → 見積回答 → 社内承認 → 注文
という流れになる場合があります。
このフローをEC上で管理できれば、メールやExcelで行っていた見積のやり取りを整理しやすくなります。
一方、複雑な個別見積をすべてECに組み込むと開発コストが大きくなる可能性もあるため、標準化できる注文だけをEC化し、特殊案件は営業担当者が対応するという切り分けも有効です。
3-7. カタログの取引先別出し分け
卸売では、すべての商品をすべての取引先へ見せる必要があるとは限りません。
たとえば、
-
取引先Aには定番商品のみ表示
-
取引先Bには定番商品と限定SKUを表示
-
取引先Cには別注商品を表示
-
契約バイヤーだけに新商品を先行公開
といった運用が考えられます。
商品だけでなく、価格、在庫、キャンペーンなども取引先ごとに制御したい場合は、どこまで出し分けが可能なのかを確認しましょう。
3-8. 在庫の出し分け・引当ロジック
BtoB卸売とBtoC ECを並行運用する企業では、在庫の扱いも重要です。
たとえば、100個の在庫があるとして、BtoC向けにすべて販売してしまうと、卸先から注文が入ったときに対応できなくなる可能性があります。
そこで、
-
BtoB専用在庫を確保する
-
BtoCとBtoBで在庫を分ける
-
特定取引先向けに在庫を引き当てる
-
入荷予定の商品を予約注文できるようにする
といった運用が必要になります。
複数倉庫を利用する場合は、マルチロケーションへの対応やWMSとの連携も確認しましょう。
3-9. 納品書・受領書・梱包書類
卸売取引では、商品を出荷する際に納品書や梱包明細などの帳票が必要になるケースがあります。
取引先指定のフォーマットがある場合は、単純なPDF出力だけでは対応できないこともあります。
確認したいのは、
-
注文ごとの納品書発行
-
梱包明細の出力
-
取引先指定フォーマットへの対応
-
PDFやCSVでの帳票出力
-
電子受領への対応
などです。
帳票作成を自動化できれば、受注後の事務作業を減らしやすくなります。
3-10. 基幹システム(ERP・WMS)連携
BtoB卸売ECを導入する場合、ECサイト単体ではなく既存システムとの連携が重要になります。
すでに販売管理、在庫管理、ERP、WMS、会計システムなどを利用している企業では、ECと既存システムの間でデータを二重入力しない設計が理想です。
代表的な連携は、
-
商品マスタ:ERP・基幹システム → EC
-
在庫情報:WMS・在庫管理 → EC
-
受注情報:EC → ERP・販売管理
-
売上情報:EC → 会計・販売管理
-
請求情報:販売管理 → 請求システム
などです。
API連携なのかCSV連携なのか、リアルタイム同期なのか一定間隔のバッチ処理なのかによって、開発費用や運用負荷も変わります。
3-11. 多言語・多通貨(越境B2B)
海外バイヤーとの取引を想定する場合、多言語・多通貨への対応も検討します。
-
表示言語の切り替え
-
取引先ごとの通貨設定
-
国別の税・関税への対応
-
海外拠点を含めた在庫管理
-
海外配送への対応
Shopifyのようにグローバル展開を前提としたEC基盤は、国内卸から海外展開へ拡張する際の選択肢になり得ます。
ただし、越境B2BではECサイトの翻訳だけでなく、決済、物流、税務、輸出入なども関係します。将来的に海外展開する可能性がある場合は、初期段階から拡張性を確認しておくと、後から全面的に作り直すリスクを抑えられます。
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Shopify Plusについて詳しく知りたい方は、無料相談や資料ダウンロードをご活用ください。
無料で相談する資料をダウンロード
電話・FAX・メールなどで行っている受発注業務をデジタル化する方法については、「受発注システムガイド」も参考になります。
受発注システムとは|機能・種類・選び方とBtoB EC連携の全体像
4. BtoB卸売ECプラットフォームの選定軸
業務要件が整理できたら、次はBtoB卸売ECのプラットフォームを比較します。
重要なのは、知名度や初期費用だけで選ばないことです。
自社の業務に必要な機能を、標準機能、アプリ、外部サービス、カスタマイズのどこで実現するのかまで確認しましょう。
4-1. プラットフォームの4タイプ
BtoB卸売ECのプラットフォームは、大きく4タイプに分類できます。
|
タイプ |
概要 |
代表例 |
構築期間目安 |
|---|---|---|---|
|
BtoB特化のクラウド型 |
卸売要件を標準機能で網羅 |
Bカート、アラジンEC、楽楽B2B等 |
2〜4ヶ月 |
|
汎用ECプラットフォームのB2B機能 |
BtoB機能を内包するEC基盤 |
Shopify Plus、Adobe Commerce(Magento)等 |
3〜6ヶ月 |
|
パッケージ型(オンプレ/プライベートクラウド) |
個別要件に合わせた構築 |
ecbeing B2B、SI Web Shopping等 |
6〜12ヶ月 |
|
受発注システム単体 |
受発注機能のみを切り出し |
mcframe RECEIVING、CO-NECT等 |
1〜3ヶ月 |
BtoB特化型は卸売特有の機能を使いやすい一方、BtoCや海外展開などを含めた拡張では制約が出る可能性があります。
一方、Shopify Plusなどの汎用ECプラットフォームは、BtoBだけでなくBtoC、コンテンツ、マーケティング、越境展開などを同一のEC基盤で考えやすい点が特徴です。
どのタイプが合うかは、現在の業務だけでなく、3〜5年後にどのような販売チャネルを構築したいかまで考えて判断することが重要です。
4-2. 選定の8つの判断軸
プラットフォームを比較するときは、次の8項目をチェックしましょう。
-
業務要件の充足度
11の業務要件のうち、標準機能で対応できるもの、アプリ追加が必要なもの、個別開発が必要なものを整理します。 -
顧客別価格・カタログ出し分けの柔軟性
取引先ごとに価格や商品を変更できるか、数量条件などを組み合わせられるかを確認します。 -
承認フロー・組織管理
企業アカウント、複数ユーザー、拠点、ロール、承認者などをどこまで管理できるか確認します。 -
基幹システム連携
ERP、WMS、販売管理、会計、CRMなどとの連携方式や実績を確認します。 -
決済・与信
請求書払い、後払い、カード、銀行振込などに対応できるか、与信管理をどのシステムで行うかを整理します。 -
拡張性
取引先数、SKU数、注文数、拠点数が増えた場合にも運用できるかを確認します。 -
総コスト(TCO)
初期費用だけではなく、月額料金、保守費、アプリ費用、連携費、カスタマイズ費、運用人件費まで含めて比較します。 -
運用体制
自社で運用するのか、制作会社やSIerに依頼するのか、導入後のサポート体制まで確認します。
特に重要なのは、資料だけを見て判断しないことです。
「対応可能」と書かれていても、実際の運用では追加開発が必要になるケースがあります。
たとえば、実際の自社データを使って、
-
取引先Aでログイン
-
価格が正しく表示されるか確認
-
最小ロットを設定
-
担当者から上長へ承認依頼
-
注文を確定
-
ERPへ受注データを連携
-
在庫を引き当てる
という一連の業務を実機で確認すると、資料だけでは分からない課題が見つかります。
4-3. 月商・取引先数・SKU数による目安
事業規模もプラットフォーム選定の重要な要素です。
|
月商規模 |
取引先数 |
SKU数 |
推奨タイプの傾向 |
|---|---|---|---|
|
月商〜500万円 |
〜100社 |
〜1,000 |
BtoB特化クラウド/受発注システム単体 |
|
月商500万〜5,000万円 |
100〜500社 |
1,000〜10,000 |
BtoB特化クラウド/汎用ECのB2B機能 |
|
月商5,000万〜5億円 |
500〜2,000社 |
10,000〜 |
汎用ECのB2B機能/パッケージ |
|
月商5億円〜 |
2,000社〜 |
多数SKU・多拠点 |
パッケージ/汎用ECのB2B機能のエンタープライズ構成 |
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卸売ECによって受注処理や在庫管理などの業務を効率化する方法については、「EC業務効率化ガイド」で詳しく解説しています。
EC業務効率化の完全ガイド|在庫・受注・物流・CSの4領域で進める自動化と人手不足対策
5. 代表的なBtoB卸売ECプラットフォームの比較
ここでは、BtoB卸売ECの代表的なプラットフォームをタイプ別に整理します。
各サービスの機能や料金は変更される可能性があるため、導入時には各社の公式情報と実機デモを確認してください。
5-1. BtoB特化のクラウド型プラットフォーム
Bカート(株式会社Dai)は、BtoB-ECに特化したクラウド型サービスです。得意先別価格、最小ロット、請求書払いなど、卸売取引で利用される機能をまとめて利用しやすい点が特徴です。
アラジンEC(株式会社アイル)は、販売管理システムであるアラジンオフィスとの連携を強みとするBtoB向けEC基盤です。既存の販売管理業務とECを連動させたい卸売事業者では、基幹連携を含めて検討できます。
楽楽B2B(株式会社ネットレックス)は、卸売や商社などの受発注業務を想定したBtoB向けEC基盤です。得意先別価格、最小ロット、帳票出力など、卸売に必要な機能を確認しながら選定できます。
MakeShop B2B(GMOメイクショップ株式会社)は、汎用ECサービスのB2B向け機能を利用する選択肢です。BtoCとBtoBの両方を扱いたい企業では、販売チャネルをどのように整理するかがポイントになります。
BtoB特化型のメリットは、卸売業務で必要になる機能を比較的短期間で導入しやすいことです。
一方、将来的にBtoC、越境EC、コンテンツマーケティングなどへ大きく拡張する場合は、対応範囲を事前に確認する必要があります。
5-2. 汎用ECプラットフォームのB2B機能
Shopify Plusは、Shopifyのエンタープライズ向けプランです。B2B機能として、企業アカウント、ロケーション、取引先別価格、数量ディスカウント、見積もり、支払い条件などを活用できます。
特に、BtoB卸売ECとBtoC ECを同時に展開したい企業や、国内卸から越境展開まで視野に入れている企業では、EC基盤を統合できる可能性がある点がポイントです。
また、Shopifyはアプリや外部サービス、APIを利用した拡張がしやすいため、標準機能だけでなく周辺システムとの組み合わせまで含めて設計できます。
Adobe Commerce(Magento Commerce)は、カスタマイズ性の高さを特徴とするエンタープライズ向けECプラットフォームです。複雑な業務要件に対応しやすい一方、構築・運用には専門知識が必要になります。
BigCommerce B2B Editionは、海外を中心に利用されているB2B向けECの選択肢です。多言語・多通貨など、海外取引を重視する企業では候補になります。
汎用ECプラットフォームのメリットは、卸売だけでなくBtoCやコンテンツ、マーケティング、海外販売などを含めた販売基盤を構築しやすいことです。
5-3. パッケージ型(オンプレ/プライベートクラウド)
ecbeing B2B(株式会社ecbeing)は、国内で長く利用されてきたECパッケージのBtoB向け選択肢です。基幹システム連携や大規模なカスタマイズなど、個別要件の多い企業では候補になります。
SI Web Shopping(株式会社SAVA!ware)も、エンタープライズ向けEC構築で利用される国産パッケージのひとつです。
futureshop B2B(株式会社フューチャーショップ)は、BtoBとBtoCを組み合わせた運用も視野に入れた選択肢です。
パッケージ型は、独自の業務要件に合わせて作り込める一方、構築期間や初期費用が大きくなりやすい点に注意が必要です。
既存業務を大きく変えることが難しく、システム側を業務に合わせる必要がある企業では選択肢になります。
5-4. 受発注システム単体
CO-NECT(CO-NECT株式会社)は、受発注業務のデジタル化に重点を置いたSaaSです。電話やFAXによる注文をまずWeb発注へ切り替えたい企業では検討しやすいでしょう。
mcframe RECEIVING(ビジネスエンジニアリング株式会社)は、製造業などの受発注業務を想定したシステムです。ERPなど既存の基幹システムと一体で業務をデジタル化する場合に検討できます。
受発注システム単体型は、ECサイトによる商品販売やマーケティングよりも、既存取引のデジタル化を優先したい場合に向いています。
5-5. プラットフォーム比較表
主要な評価軸を比較すると、以下のようになります。
|
評価軸 |
BtoB特化クラウド |
汎用ECのB2B機能 |
パッケージ型 |
受発注システム単体 |
|---|---|---|---|---|
|
卸売業務要件の標準対応 |
★★★★★ |
★★★★☆ |
★★★★★ |
★★★☆☆ |
|
構築スピード |
★★★★☆ |
★★★★☆ |
★★☆☆☆ |
★★★★★ |
|
カスタマイズ自由度 |
★★☆☆☆ |
★★★★☆ |
★★★★★ |
★★☆☆☆ |
|
越境・多言語対応 |
★★☆☆☆ |
★★★★★ |
★★★☆☆ |
★★☆☆☆ |
|
BtoC併用運用 |
★★☆☆☆ |
★★★★★ |
★★★☆☆ |
★☆☆☆☆ |
|
初期費用の抑えやすさ |
★★★★☆ |
★★★★☆ |
★★☆☆☆ |
★★★★★ |
この比較はあくまで一般的な傾向です。
たとえば、Shopify PlusはBtoB機能だけを見るのではなく、BtoC EC、マーケティング、海外販売、アプリ拡張、データ活用などを含めた総合的なEC基盤として検討する必要があります。
逆に、既存取引先へのWeb発注機能だけが必要であれば、BtoB特化型や受発注システムのほうがシンプルに導入できる場合もあります。
5-6. 「向いている事業者」のすみ分け
各タイプの特徴を整理すると、以下のように考えられます。
-
BtoB特化クラウド型:卸売を主軸とし、卸特有の機能を標準機能中心で利用したい
-
汎用ECのB2B機能:BtoBとBtoCを同一基盤で運用したい、海外展開も視野に入れている
-
パッケージ型:大規模企業で、独自の業務要件や複雑な基幹連携がある
-
受発注システム単体:電話・FAX中心の受発注をまずデジタル化したい
重要なのは、プラットフォームそのものの優劣ではありません。
自社の業務要件、取引先数、SKU数、既存システム、将来の販売チャネルを整理したうえで、必要な機能を過不足なく実現できるかを判断することが大切です。
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自社の業務要件に合ったEC基盤を選ぶ具体的な方法については、「ECプラットフォーム選定ガイド」をご覧ください。
ECプラットフォーム選定の完全ガイド|要件定義から評価まで4ステップで解説
6. BtoB卸売EC導入の7ステップ
BtoB卸売ECを導入するときは、いきなりサイト制作を始めるのではなく、現状業務の把握から段階的に進めることが重要です。
6-1. ステップ1:現状業務の棚卸し(期間:2〜4週間)
最初に行うのは、現在の受発注業務を可視化することです。
たとえば、電話、FAX、メール、営業担当者経由など、注文がどのチャネルから入っているのかを整理します。
さらに、
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取引先数
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SKU数
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月間受注件数
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受注チャネル別の件数
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1件あたりの処理時間
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入力ミスの件数
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問い合わせ件数
-
取引先ごとの価格条件
-
支払条件
-
締め日
-
最小ロット
などを一覧化します。
この作業によって、EC化によって削減できる業務量を把握できます。
たとえば月3,000件の受注を1件5分で処理している場合、単純計算で月250時間になります。
もちろんすべてがEC化できるとは限りませんが、こうした数字を把握しておけば、導入効果やROIを具体的に考えやすくなります。
6-2. ステップ2:業務要件・システム要件の定義(期間:3〜6週間)
棚卸しの結果をもとに、業務要件とシステム要件を整理します。
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業務要件:誰が、いつ、何を、どのように処理するか
-
システム要件:必要な機能、性能、セキュリティ、拡張性
-
連携要件:ERP、WMS、販売管理、会計、CRMなどとのデータ連携
ここで重要なのは、現在の業務をそのままシステム化することだけを目的にしないことです。
EC化をきっかけに、不要な承認や二重入力をなくせる可能性もあります。
現在の業務をすべて再現するのではなく、EC化によって業務そのものを簡素化できないか検討しましょう。
6-3. ステップ3:プラットフォーム選定とPoC(期間:4〜8週間)
要件が整理できたら、3〜5社程度の候補を比較します。
-
RFI(情報提供依頼)
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RFP(提案依頼)
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ベンダーからのデモ
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見積取得
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PoC
-
セキュリティ確認
-
基幹システム連携の確認
特に重要なのが実機デモです。
自社の商品データや価格条件を想定し、
取引先ログイン → 商品閲覧 → 価格確認 → カート投入 → 承認 → 注文 → 受注連携
という一連の流れを確認しましょう。
資料に「対応」と書かれていても、実際には追加開発や外部サービスが必要になる場合があります。
6-4. ステップ4:構築(期間:3〜6ヶ月)
プラットフォームが決まったら構築を開始します。
主な作業は、
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商品マスタの整備
-
取引先マスタの整備
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価格マスタの整備
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商品ページ制作
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顧客別価格設定
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ロット設定
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承認フロー構築
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決済設定
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帳票設定
-
ERP・WMS連携
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テスト
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UAT
などです。
特に時間がかかりやすいのがマスタデータの整理です。
商品名やSKUコード、価格、JANコード、画像、取引先コードなどに表記揺れがあると、データ移行後に問題が発生します。
そのため、システム開発と並行してデータクレンジングを進めることが重要です。
6-5. ステップ5:取引先オンボーディング(期間:1〜3ヶ月)
BtoB卸売ECは、システムを公開するだけでは成功しません。
取引先がECを使って初めて、電話やFAXの削減効果が生まれます。
そのため、導入前から取引先向けの案内を準備します。
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操作マニュアル
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ログイン案内
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利用開始メール
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説明会
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FAQ
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問い合わせ窓口
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パイロット運用
-
初回注文のサポート
長年電話やFAXを利用してきた取引先ほど、ECへの切り替えに心理的・実務的な負担を感じることがあります。
最初から全取引先を移行させるのではなく、デジタルへの移行に積極的な取引先から始める方法も有効です。
6-6. ステップ6:本番運用・段階的拡大(期間:継続)
パイロット運用で問題が解消できたら、利用企業を徐々に増やします。
たとえば、
-
大口取引先から開始
-
特定地域の取引先から開始
-
デジタル化に積極的な顧客から開始
-
主要SKUから開始
といった方法があります。
電話やFAXを一度に完全廃止する必要はありません。
一定期間は電話・FAXとECを併用し、ECの利用率を確認しながら移行するほうが、現場への負担を抑えられます。
また、受発注だけでなく、在庫照会、注文履歴確認、納期確認などもECサイトへ集約すると、問い合わせ削減につながります。
6-7. ステップ7:運用改善・拡張(期間:継続)
BtoB卸売ECは公開して終わりではありません。
導入後は、
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取引先ごとのEC利用率分析
-
注文チャネル別の受注件数分析
-
利用率が低い顧客への案内
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売れ筋商品の表示改善
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商品レコメンド
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季節販促
-
キャンペーン
-
休眠顧客へのアプローチ
-
新規取引先獲得
-
越境B2Bへの展開
などを継続的に改善します。
ECに蓄積された注文データを分析すれば、どの取引先がどの商品をどの頻度で購入しているのかも把握しやすくなります。
そのデータを営業活動に活用することで、ECを単なる受注窓口ではなく、卸売事業の販売基盤として育てられます。
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卸売ECと在庫情報を連携し、適正在庫を実現する方法については、「EC在庫管理ガイド」も参考にしてください。
EC在庫管理の完全ガイド|基本フロー・課題・システム連携とKPI設計を徹底解説
7. 卸売EC導入で陥りがちな5つの失敗パターン
BtoB卸売ECでは、システムそのものよりも、要件整理や運用設計が原因で問題が起こることがあります。
7-1. 失敗1:BtoCの設計をそのまま流用する
すでにBtoC ECを運営している企業では、その仕組みをBtoBにも利用したくなるかもしれません。
しかし、顧客別価格、最小ロット、承認フロー、請求書払い、与信などは、BtoCとは異なる考え方が必要です。
BtoC ECをベースにする場合でも、卸売業務をゼロベースで棚卸しし、どこまで実現できるのかを確認しましょう。
7-2. 失敗2:マスタデータの整備を軽視する
商品マスタ、取引先マスタ、価格マスタが整理されていない状態でEC構築を始めると、後から大量の修正が発生します。
よくある問題は、
-
SKUコードの重複
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古い商品情報
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取引終了済み企業のデータ
-
価格の不整合
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商品画像の不足
-
取引先コードの不一致
などです。
システム開発だけでなく、データ整備をプロジェクトの主要タスクとして扱うことが重要です。
7-3. 失敗3:取引先のオンボーディングを後回しにする
ECサイトが完成しても、取引先が使わなければ業務効率化にはつながりません。
特に電話やFAXに慣れている企業では、ECへの移行を促すためのサポートが必要です。
説明会、操作マニュアル、問い合わせ窓口などを用意し、最初の注文まで支援することも検討しましょう。
また、営業担当者がEC利用を案内できるよう、社内向けの説明資料も準備しておくと運用がスムーズです。
7-4. 失敗4:基幹システム連携を軽く見積もる
ECサイト単体では問題なくても、基幹システムとの連携段階でプロジェクトが複雑になることがあります。
たとえば、
-
商品コードが一致しない
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在庫更新のタイミングが異なる
-
受注ステータスの定義が違う
-
キャンセル処理のルールが違う
-
エラー発生時の再送方法が決まっていない
などです。
連携方式だけでなく、エラーが起きた場合に誰が確認し、どのシステムで修正するのかまで設計しておきましょう。
7-5. 失敗5:完成形を目指して導入が遅れる
すべての取引先、全SKU、すべての業務を一度にEC化しようとすると、プロジェクトが長期化します。
最初は主要取引先と主要商品に絞り、パイロット運用を開始する方法もあります。
たとえば、
第1段階:既存顧客のWeb発注化
↓
第2段階:在庫・注文履歴のセルフサービス化
↓
第3段階:営業・マーケティング機能の強化
↓
第4段階:越境B2Bや新規顧客獲得への拡張
というように、段階的に機能を増やす方法です。
最初からすべてを完璧に実現するのではなく、業務効果の大きい部分からEC化することが、プロジェクトを前に進めるポイントです。
「導入後の失敗を防ぎたい」「現在の要件定義や導入計画をチェックしてほしい」という方は、ぜひ専門家にご相談ください。
Shopify Plusは、柔軟なAPIや豊富な連携機能により、既存業務を改善しながらEC化を進めることができます。
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ECを含む複数チャネルの注文情報を一元管理する方法については、「OMSガイド」で詳しく解説しています。
OMSとは|受発注管理システムの機能・種類・選び方とEC連携の全体像
8. 卸売ECの費用相場と投資回収の考え方
BtoB卸売ECの費用は、プラットフォームの種類だけでなく、商品数、取引先数、既存システム、カスタマイズ量、データ移行の難易度などによって大きく変わります。
8-1. 卸売EC導入の費用相場
一般的な費用感は以下のとおりです。
|
プラットフォーム種別 |
初期費用相場 |
月額費用相場 |
|---|---|---|
|
BtoB特化クラウド型 |
50〜300万円 |
月額3〜15万円 |
|
汎用ECのB2B機能 |
100〜500万円 |
月額10〜50万円 |
|
パッケージ型(中規模) |
500〜2,000万円 |
月額10〜50万円(保守) |
|
パッケージ型(エンタープライズ) |
2,000万円〜 |
月額50万円〜(保守) |
|
受発注システム単体 |
0〜50万円 |
月額1〜10万円 |
ただし、ECの導入費用はプラットフォーム料金だけではありません。
実際には、
-
デザイン・サイト制作費
-
カスタマイズ費
-
アプリ導入費
-
ERP・WMS連携費
-
データ移行費
-
商品マスタ整備費
-
テスト費
-
取引先向けマニュアル制作費
-
社内教育費
-
運用人件費
などが発生する場合があります。
そのため、初期費用だけで比較すると、実際の総コストと大きく乖離する可能性があります。
特にShopify Plusなどの汎用EC基盤を利用する場合は、標準機能だけでなく、アプリ、外部サービス、開発会社への依頼費用なども含めてTCOを確認することが重要です。
8-2. 投資回収の見方
BtoB卸売ECのROIは、単純にEC経由の売上だけで判断するのではなく、業務効率化も含めて考えます。
代表的には次の3つです。
-
業務効率化:受注入力時間、問い合わせ対応、ミスによる修正作業などの削減
-
受注機会拡大:24時間発注、追加注文のしやすさ、新規取引先獲得
-
データ活用:需要予測、在庫最適化、販売分析、休眠顧客へのアプローチ
たとえば、月間3,000件の注文処理に1件5分かかっている場合、年間では約3,000時間の作業時間になります。
EC化によってこのうち一定割合を削減できれば、人件費の削減だけでなく、営業担当者が新規開拓や既存顧客への提案に使える時間も増えます。
したがって、ROIを考える際には、
EC導入による売上増加
+ 受発注工数削減
+ 問い合わせ削減
+ ミス・手戻り削減
+ 在庫最適化
といった複数の効果を合算して考えると、投資効果を把握しやすくなります。
8-3. 単年ROIではなく多年累計で見る
BtoB卸売ECでは、初年度に構築費、データ移行費、教育費などが集中するため、初年度だけを見ると投資効果が小さく見える場合があります。
そのため、3〜5年程度の期間でTCOを比較する方法が現実的です。
たとえば、
現状維持コスト
-
受注入力担当者の工数
-
電話・FAX対応
-
問い合わせ対応
-
ミスの修正
-
紙帳票の処理
-
既存システムの維持費
と、
EC導入後のコスト
-
プラットフォーム利用料
-
保守費
-
アプリ・外部サービス費
-
システム運用担当者の工数
-
初期投資の償却
を比較します。
売上増加だけでなく、現在発生している業務コストがどれだけ減るのかを見ることで、BtoB卸売ECへの投資判断をより具体的にできます。
「自社の投資額は妥当なのか」「ROIや投資回収期間を試算したい」という方は、ぜひ無料相談をご利用ください。
Shopify Plusは、標準機能や豊富な連携機能を活用することで追加開発を抑え、中長期的なTCO最適化にも貢献します。
費用対効果を重視して検討したい方は、ぜひ無料相談・資料ダウンロードをご利用ください。
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倉庫の入出荷や在庫情報をECと連携する際に重要なWMSについては、「WMSガイド」もご覧ください。
WMSとは|倉庫管理システムの機能・種類・選び方とEC連携の全体像
まとめ
BtoB卸売ECは、消費者向けECをそのまま法人向けに置き換えるだけの仕組みではありません。
顧客別価格、最小ロット、承認フロー、与信、請求書払い、見積依頼、カタログ出し分け、在庫引当、帳票、基幹システム連携など、卸売特有の業務要件を満たす必要があります。
そのため、BtoB卸売ECの導入では、プラットフォーム選定よりも先に現在の業務を棚卸しすることが重要です。
どの取引先がどの価格で購入しているのか、どの商品にどのロット条件があるのか、受注処理にどれだけ時間がかかっているのかを把握することで、必要なシステム要件が明確になります。
プラットフォームを選ぶ際も、初期費用だけでなく、月額費用、カスタマイズ費、アプリ費、基幹連携費、運用人件費まで含めた総コストで比較しましょう。
Shopify Plusなどの汎用EC基盤を利用する場合は、BtoB機能だけを見るのではなく、BtoCとの併用、マーケティング、越境EC、外部システムとの連携など、今後の事業展開まで含めて検討することが大切です。
また、ECサイトを構築すること自体がゴールではありません。
取引先に利用してもらい、電話やFAXによる受注を減らし、注文履歴や購買データを営業・マーケティングに活用できる状態をつくって初めて、BtoB卸売ECの効果が発揮されます。
BtoB卸売EC成功の5つのポイント
-
業務要件の棚卸しを最初に徹底する
顧客別価格、最小ロット、承認、決済、在庫、帳票、基幹連携など、自社特有の卸売業務を可視化します。 -
BtoC設計をそのまま流用しない
卸売では取引先ごとに価格や発注条件が異なります。BtoC ECをベースにする場合でも、BtoB卸売の要件を改めて整理しましょう。 -
マスタデータ整備をプロジェクトの中核に置く
商品・取引先・価格マスタの品質は、ECの運用品質に直結します。構築開始後ではなく、早い段階から整備を進めることが重要です。 -
取引先オンボーディングをシステム構築と並行で準備する
取引先が使わなければEC化の効果は得られません。説明会、マニュアル、問い合わせ窓口などを事前に用意しましょう。 -
段階的に拡大するアプローチを選ぶ
主要取引先・主要SKUから開始し、利用状況を見ながら対象範囲を広げることで、過度な初期投資や導入リスクを抑えやすくなります。
最初の一歩を踏み出そう
BtoB卸売ECの検討を始めるなら、いきなりプラットフォームを比較するのではなく、まず現在の受発注業務を棚卸ししましょう。
電話・FAX・メールによる注文が月に何件あるのか、1件の処理に何分かかっているのか、どの取引先にどの価格や支払い条件を設定しているのかを整理すると、EC化すべき業務が見えてきます。
次に、業務要件とシステム要件を整理し、複数のプラットフォームで実機デモを行います。
特に、顧客別価格、最小ロット、承認、請求書払い、在庫、基幹システム連携など、卸売ECの中核となる部分は、自社の実際の業務フローを想定して確認することが重要です。
BtoB卸売ECは、単なる受注窓口ではなく、営業、受発注、在庫、物流、請求、顧客データをつなぐ販売基盤として活用できます。
自社の業務に合った設計を行い、導入後の取引先利用まで見据えて計画することが、EC化の効果を引き出すポイントです。
「電話・FAX・メール中心の受注をEC化したい」「BtoB卸売ECへの移行を検討している」「Shopify Plusを含めて最適なプラットフォームを比較したい」という方は、ぜひ専門家にご相談ください。
自社の業務要件や既存システム、取引先数、商品数、今後の成長計画を踏まえて、要件整理からプラットフォーム選定、構築・導入まで具体的にご提案します。
「電話やFAX中心の受発注業務を効率化したい」「BtoB卸売ECへ移行したい」「将来を見据えて拡張性の高いECプラットフォームを導入したい」という方は、ぜひ無料相談や資料ダウンロードをご利用ください。
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取引先別価格や承認フロー、基幹システム連携などの要件を整理する際は、「EC要件定義書ガイド」も参考になります。
EC要件定義書の書き方|テンプレ項目・サンプル・チェックリストを徹底解説
参考文献
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経済産業省『令和5年度 電子商取引に関する市場調査』2024年(URL:https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/statistics/outlook/ie_outlook.html)
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総務省『通信利用動向調査』
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各プラットフォーム公式サイト(Bカート、アラジンEC、楽楽B2B、MakeShop B2B、Shopify Plus、Adobe Commerce、BigCommerce、ecbeing、futureshop、SI Web Shopping、CO-NECT、mcframe RECEIVING)
※本記事中の数値は2026年5月時点の業界統計・公開情報に基づきます。費用相場・規模感はあくまで一般的な目安であり、実案件は事業構造・要件によって大きく異なります。
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