顧客データの活用はマーケティング戦略やパーソナライズ施策に欠かせず、企業の成長を左右する重要な要素です。PwCコンサルティングの調査では、顧客データの収集と活用を行っている企業のうち、50%以上が売上向上を、また40%以上が業務効率化を、成果として実感していると報告されています。
一方で、近年のプライバシー保護への関心の高まりや、ユーザーの行動を追跡する(クッキー)への敬遠によって、顧客データの適切な収集や取り扱い方が新たな経営課題となっています。
この記事では、顧客データの重要性と収集方法、効果的な活用ポイントなどをご紹介します。

顧客データとは
顧客データとは、企業が顧客から収集する個人情報や属性、購入履歴、Webサイト上での行動データなど、自社と顧客の接点から得られる多彩な情報を指します。
企業は、ターゲットオーディエンスやペルソナをより深く理解し、効果的なコミュニケーションやエンゲージメントにつなげるために顧客データを活用します。顧客データの分析を通じて、顧客がブランドに何を求めているか、どのような商品を探しているか、どのような方法でブランドと関わりたいのかなど、具体的なニーズや行動特性を推測することができます。
顧客データの種類
顧客データは、大きく以下の3種類に分けられ、それぞれ収集方法や特徴が異なります。
ファーストパーティデータ
ファーストパーティデータとは、自社で運営するWebサイトやアプリ、店舗などのチャネルを通じた顧客とのやり取りから直接収集するデータを指します。会員情報や購入履歴、Webサイト上での行動データなどが該当します。
ファーストパーティデータは多岐にわたるため、顧客一人ひとりのニーズに合わせたパーソナライズなどの目的に合わせて、どんな情報を収集するか決定していく必要があります。
サードパーティデータ
サードパーティデータとは、データ提供会社などの第三者が収集および販売する顧客データを指します。統計データや市場調査レポート、消費者動向などが該当します。
自社と接点のない層も含めた幅広い消費者のデータを取得できる一方、プライバシー保護に関わる規制強化などの影響により、利用できる場面が限定されたり、取り扱いに配慮が求められたりする点に注意が必要です。
ゼロパーティデータ
ゼロパーティデータとは、顧客が企業に対し自発的に提供するデータを指します。このデータには、趣味嗜好や商品に対する要望、アンケートへの回答などが該当します。
ファーストパーティデータに含まれますが、機械的に収集される購入履歴などとは異なり、顧客が主体的に入力するデータを指します。そのため分析や推測を行わなくても、顧客の意思を明確に把握できるデータといえます。

顧客データの活用が重要な理由
データに基づく意思決定をサポートする
顧客データは、ビジネス上の意思決定を支える重要な資産となります。顧客データを分析することで、どの施策が成果を上げているのか、どこに改善の余地があるのかを把握でき、商品の仕入れや在庫管理、セールの実施時期などを適切に判断できます。
例えば、顧客データを分析した結果、「スニーカーを購入した顧客は、約半年後に新しいスニーカーを購入する傾向がある」と分かったとします。これを活用すれば、次のような施策を実施できます。
- 新しいスニーカーが必要になりそうなタイミングでのリマインドメール送信
- 人気サイズの在庫切れを防ぐための事前の在庫補充
- リピーター向けの特別なキャンペーンや割引の実施
パーソナライゼーションと顧客体験の向上に役立つ
顧客データをもとに一人ひとりの興味や好みを把握することで、それぞれのニーズに合わせたパーソナライゼーションが可能になります。「自分のことを理解してくれている」と顧客が感じるアプローチは、ブランドロイヤルティの向上に直結します。
またパーソナライゼーションを発展させることで、店舗やECサイトなど複数の販売チャネルを統合するユニファイドコマースの実現にもつながっていきます。あらゆる顧客データが1つのプラットフォームにまとまることで、一人ひとりを多角的に把握する「360度の顧客ビュー」を把握できるようになります。これにより、以下のような施策で購買体験を向上することができます。
- 顧客の興味関心に合わせた商品を表示する、パーソナライズされたWebサイト
- 好みや入力情報を反映したスムーズなチェックアウト
- ECサイトと実店舗など複数チャネルでの一貫した購買体験
- 居住地域に合わせた商品やコンテンツの表示
マーケティング最適化とROIの改善につながる
顧客データを活用することで、広告やマーケティング施策のROI(投資利益率)を高めることができます。例えば、次のようなマーケティング施策を通じて、客単価の向上や新たなアプローチを図ることができます。
- 顧客の行動データをもとに、購入可能性の高いユーザーへのリターゲティングアプローチを行うことができます。
- Shopify Collabs(ショッピファイ・コラボ/日本語未対応)を活用し、インフルエンサーとの連携やアフィリエイトプログラムを一元管理できます。
- Shopifyの顧客セグメント機能により行動や購入履歴、属性に応じてグループ化することで、それぞれに合わせたマーケティング施策を展開できます。
- 顧客データから分析したニーズをもとに、Shopify Collective(ショッピファイ・コレクティブ)などのツールを活用して最適な商品を提供するブランドと連携を実現できます。

顧客データの収集方法
1. Webサイト上の行動から収集する
自社のWebサイトでは、ページ閲覧や商品閲覧、カート追加、購入などの顧客行動をはじめ、さまざまなファーストパーティデータを収集できます。Shopifyピクセルマネージャーを利用すると、継続的に以下のような顧客の行動データの計測と管理ができます。
- ページビュー(PV)
- カートへの追加履歴
- 購入履歴
- 商品ページの閲覧履歴
- チェックアウトの開始と進行状況
2. アカウント登録を通じて収集する
顧客にアカウント登録を促すことで、氏名やメールアドレスといった個人情報データとともに、商品の好みなどパーソナライズに役立つデータも収集できます。以下のような機能や特典を提供することで、顧客にとってもアカウントを登録するメリットを感じてもらえるようになります。
- 商品のお気に入り登録
- 注文状況の確認や返品手続きの簡略化
- 購入履歴の確認
- パーソナライズされた商品レコメンド
- 会員限定特典やポイントプログラム
登録時は、メールアドレスなど必要最低限の情報だけを取得し、好みや興味などの情報は、その後のストア利用を通じて徐々に収集します。
3. 商品購入を通じて収集する
顧客がストアで商品を購入するまでのプロセスでも、さまざまなデータを収集することができます。例えば以下のような購買データを分析することで、戦略立案に役立つ洞察を得ることができるでしょう。
- 購入頻度や購入時期(季節ごとの購買傾向など)
- 平均注文額や購買傾向
- 一緒に購入されることが多い商品
- 利用される決済方法
- オンラインストアや実店舗など、利用チャネルの傾向
Shop Pay(ショップ・ペイ)を利用すると、Shopify POSを導入した実店舗でも購入データを収集できるため、オンラインと実店舗の顧客データの一元管理やマーケティング施策、商品展開の最適化に役立てられます。
4. アンケートを活用して収集する
購入直後にアンケートを実施することで、購入動機やストアを知ったきっかけ、興味関心、価値観、ライフスタイルなどのサイコグラフィックデータ(顧客の心理的な側面を把握するためのデータ)が収集できます。アンケート実施の際は、以下を意識しましょう。
- 質問数は3〜4問程度に絞る
- 注文完了ページや注文状況ページに設置する
- 「当ストアをどこで知りましたか?」など、具体的な質問をする
- 評価形式の質問と自由記述を組み合わせる
ShopifyアプリのAsklayer(アスクレイヤー)は、購入後ページやメールでアンケートを実施できるため、顧客満足度や流入経路、購入理由の分析に役立ちます。
5. SNSのコメントや投稿から収集する
SNSのコメントや投稿、シェアなどを分析することで、顧客の興味や商品の利用実態に関する顧客インサイト(潜在的なニーズや購入動機)を収集できます。例えばアパレルブランドの場合、自社の商品について「普段着として着用している投稿が多い」など、利用シーンを把握して商品開発などに活かすことができます。SNSでは、次の点を確認しましょう。
- 商品に関するコメントやDM
- 顧客が使用しているハッシュタグ
- 保存やシェアが多いコンテンツ
- よく投稿される疑問や問い合わせ、顧客サービス
6. 登録フォームから収集する
登録フォームやポップアップを効果的に活用することで、見込み顧客からメールアドレスを収集できます。初回登録時の割引や限定キャンペーンなどのメリットを伝えることで、メール登録を促進しましょう。また入力途中の離脱防止として、メールアドレスや氏名などの重要な入力項目は、フォーム上部に配置します。Shopify Forms(ショッピファイ・フォーム)を利用することで、以下のような施策や取り組みを簡単に実現することができます。
- メールマーケティング用の登録フォームの作成
- 卸売事業者からの取引申請と承認
- オンラインストア訪問者の情報収集
- 収集する情報やフォーム表示のカスタマイズ
- 割引特典の設定とメール登録の促進
Shopify FormsはShopアプリとの連携も可能で、配布した割引コードをチェックアウト時に自動適用できます。さらに、フォームの管理や分析、Shopify Flow(ショッピファイ・フロー)と連携したマーケティングの自動化にも対応しています。

顧客データを効果的に活用するポイント
1. CRMによる一元管理とマーケティングオートメーション
CRMを活用することで、オンラインストアや実店舗など複数のチャネルの顧客情報を一元管理できるようになります。
さらに、統合されたデータをマーケティングオートメーションに活かせば、顧客がお気に入り登録をした商品の再入荷通知や、過去の購入履歴に応じたメール配信などの自動化も可能となります。
2. 顧客データの分析とパーソナライズ
顧客データを分析することで、顧客の好みや購買行動に合わせた商品提案やマーケティング施策を実施できます。Shopifyのストア分析機能では、ストアのパフォーマンスやサイトの訪問者行動、売上データを分析できます。購入履歴や閲覧履歴を活用すれば、顧客ごとのおすすめ商品の表示や、買い替え時期に合わせたメールの配信もできます。
また、顧客満足度調査の指標であるNPSを分析することで、「どの商品を購入した顧客が満足しているか」「どの流入経路の顧客が高い評価をしているか」などを把握でき、より効果的なマーケティング施策が可能です。
例えばファッションブランドのSOÉJU(ソージュ)では、オンラインでの診断やカウンセリングをもとに、一人ひとりの悩みや好みに合わせたスタイリングの提案を行っています。また、特定商品の購入者に商品のお手入れ方法やスタイリング情報を配信するなど、コミュニケーション設計にも活用しています。こうした施策により、同社のEC売上は毎年2倍近い成長を維持しています。
3. 継続的な改善
顧客データの収集方法や有益な情報を得られる接点を分析し、継続的な改善を行うことが重要です。例えば、購入後アンケートの回答率は低くても、有益なインサイトが得られている場合、設問数の削減や特典の付与によって回答率の向上を図れます。また、新しい施策を取り入れてみるのも効果的です。例えば、以下のような施策が考えられます。
- ロイヤルティプログラムの仕組みの見直し
- アカウント登録特典の変更
- フィードバック収集のタイミング調整
改善する際は、一度に複数の施策を変更せず、一つずつ試しましょう。変更後は一定期間データを収集し、効果を確認してから次の施策を実施することが大切です。

顧客データの収集と活用における課題
プライバシーとセキュリティ
顧客データの収集と活用を行う際には、プライバシーやセキュリティへの配慮が欠かせません。収集するデータの種類(メールアドレスや購入履歴、閲覧履歴など)や利用目的を顧客へ明確に伝え、同意を得たうえで適切に管理することが重要です。
アカウント作成を促す際には「お客様に合わせた商品やサービスをご案内するため、設定情報を保存してもよろしいですか?設定はいつでも変更できます」などと案内することで、顧客に安心感を与えることができます。
Shopifyでは、顧客データを安全に管理し、データ保護規制への対応を支援するため、以下のような機能と環境を提供しています。
- 顧客からデータ収集の許可を得るための同意ツール
- データの取り扱い方法を明記したDPAなどの文書
- 顧客データを安全に保管する環境や暗号化
- プライバシールールを最新に保つためのリソース
データの断片化
例えばオンラインストアと実店舗の両方を運営している場合、顧客データがそれぞれのシステムに分散しやすくなります。その結果、顧客の購買行動やニーズを正確に把握することが難しくなります。
ドラッグストアのサンドラッグでも同様の課題を抱えていましたが、Shopifyを導入し、ECサイトと実店舗の顧客ID統合によるデータの一元化と、商品の購入場所が実店舗かオンラインか、またオンライン上のどこからなのか把握できる購買データの可視化を実現しました。
データの正確性と関連性
顧客データを常に最新かつ正確な状態に保つことも重要な課題です。顧客のニーズや購買行動は変化するため、データを継続的に更新する必要があります。
Shopifyでは、POSとeコマースを共通のプラットフォーム上で管理でき、実店舗とオンラインの注文情報や在庫情報、顧客データなどを同期させることができます。これにより、最新の購買データをもとに商品を提案したり、正確な在庫情報を顧客に表示できるほか、需要予測や在庫計画にも役立ちます。

Shopifyを活用した顧客データ管理
Shopifyではオンラインストアと実店舗などの顧客データを一元管理できるため、データの分散を防ぎ管理の負担を軽減できます。Shopifyには、次のような特徴があります。
- 顧客データや同意設定の一元管理
- 販売チャネルを問わず一貫したデータ収集基準
- データ転送を最小限に抑えた、安全な管理
- データ保護規制への対応を支援する機能
Shopifyは、販売チャネル全体の顧客データを統合して管理できるよう設計されています。統合された顧客プロフィールにより、すべての販売チャネルで顧客のプライバシー設定を反映したデータ管理を実現できます。また、マーケティングツールとも連携しやすく、顧客データを効果的に活用できます。データ保護規制の変更にあわせてシステムも更新されていくため、法令への対応を進めやすくなります。
まとめ
顧客データの収集は、ECサイトのマーケティングにおいて欠かせない取り組みです。また、プライバシー保護に関する規制の強化や、プライバシーへの意識が高まる消費者の増加といった背景から、自社で収集するファーストパーティデータがこれまで以上に重要となっています。
Shopifyは、オンラインストアと実店舗など複数のチャネルを横断して顧客データを収集する場合にも効果的な、統合プラットフォームとして機能します。長期的な顧客関係の構築とビジネスの成長につながる顧客データ基盤を整えるためにも、ぜひご活用ください。
顧客データの収集方法に関するよくある質問
顧客データの収集方法は?
顧客データは、Webサイト上でのページの閲覧、アカウントの登録、商品購入などの利用状況に加え、アンケートやSNSなどの顧客との接点、メール登録フォームなどを通じて収集できます。
顧客から情報を収集する際のコツは?
アカウント登録や商品購入、アンケート、登録フォームなど、顧客との接点で自然に情報を収集しましょう。登録時は必要最低限の情報だけを取得し、アンケートは質問数を絞ることで回答率の向上につながります。また、会員限定特典やポイントプログラムなどのメリットを提供すると、情報を提供してもらいやすくなります。
顧客データの主な種類は?
顧客データは、大きく次の3種類に分類できます。
- ファーストパーティデータ:自社のWebサイトやアプリ、店舗などを通じて直接収集するデータ(会員情報、購入履歴、Webサイト上での行動データなど)
- サードパーティデータ:データ提供会社などの第三者が収集、提供するデータ(市場調査データや消費者動向など)
- ゼロパーティデータ:顧客がアンケートやフォームなどを通じて自発的に提供するデータ(趣味嗜好、購入目的、商品への要望など)




