オンライン講座を運営する場合、講座の制作だけでなく、受講者の登録、教材の配信なども必要です。こうした業務をまとめて管理するために使われるのが、LMS(学習管理システム)です。
また、LMSを活用することで、オリジナルのオンライン講座を販売する在宅ビジネスなどを展開することもできます。
この記事では、LMSとは何か、LMSの主な機能や選び方、LMSを活用したeラーニングビジネスなどについて解説します。

LMSとは
LMS(Learning Management System:学習管理システム)とは、eラーニングの提供や運営に必要な業務を一元管理するためのシステムです。学校教育や企業の従業員研修だけでなく、オンラインスクールなどでも利用されます。
LMSの主な機能
- 学習素材の作成や配信:テキストや動画などの教材を作成し、コースに割り当てて受講者に提供する
- 受講者の管理:受講者の登録やグループ分け、講座への割り当てを行う
- 学習環境の提供:受講者がLMSへログインし、教材の閲覧、成績の確認、講師への質問などを行える
- 評価や認定:テストや課題の採点、修了証の発行などを行う
- 指導やフィードバック:課題へのコメントや質問への回答などを行う

eラーニングビジネスとは
eラーニングビジネスとは、インターネットを通じてオンライン講座などの学習コンテンツを提供し、受講料などから収益を得るビジネスモデルです。運営や管理には、EC機能を備えたLMSや、LMS機能を追加したECプラットフォームなどが使われることが多いです。
学習コンテンツは無形商材なので在庫を持つ必要がなく、比較的少ない初期費用で始められるため、個人でも取り組みやすいオンラインビジネスです。たとえば、ハンドメイドなどの趣味で培った知識や技能を、オンライン講座にして提供できます。

eラーニングビジネスでLMSとEC機能を一体化するメリット
運営業務を効率化できる
講座の運営と販売を一元管理することで、購入後の受講者登録などを自動化できます。たとえば、購入時に登録されたメールアドレスを用いた受講者用アカウントの作成、購入した講座の割り当て、ログイン案内メールの送信といった流れをシステムで処理できます。
同じデータを異なるシステムへ繰り返し入力するなどの手間を省けるため、講座の作成やマーケティングなど、eラーニングビジネスのコア業務に、より多くの時間を充てられるようになります。
顧客体験を改善できる
講座の購入から受講までの導線がスムーズになることで、顧客の負担を減らせます。たとえば、講座の内容紹介ページからそのままチェックアウトし、決済完了後すぐに講座へアクセスできるUX(ユーザーエクスペリエンス)を構築できます。
講座の内容紹介ページから別の決済用サイトへ移動する必要がなくなれば、決済までの間の離脱を防ぎやすくなります。また、シンプルで分かりやすい操作体験を提供できるため、安心して利用してもらいやすくなります。
販売方法を広げられる
さまざまな販売方法や料金設定に対応したシステムを利用することで、顧客や講座内容に合わせたサービスを提供できるようになり、講座の収益化を図りやすくなります。たとえば、以下のような販売が可能です。
- 複数の講座をまとめたセット販売
- サブスクリプションや会員サービス
- 割引クーポンやセール
- クロスセルとアップセル
- 分割払い
- 書籍などの物理商品を組み合わせた販売
買い切り型の講座販売だけに依存しない体制を構築することで、AOV(平均注文額)やLTV(顧客生涯価値)の向上、継続的な収益の創出などにつなげられます。
購入データと学習データを組み合わせやすい
「どの講座を購入したか」という購入データと、「どこまで受講したか」といった学習データをまとめて確認できれば、より手軽に分析を行えます。複数のシステムからCSVファイルでデータをダウンロードし、項目や形式を整えるといった作業も減らせます。
購入データと学習データを組み合わせた分析は、講座の質や販売施策の改善に役立ちます。たとえば、売上は高くても修了率が低い講座を特定できれば、内容や構成を見直すことで、顧客満足度や継続購入につなげられます。また、初級講座を終えた顧客へ上級の講座を案内するなど、一人ひとりの学習状況に合わせた追加購入の提案にも活用できます。
eラーニングビジネスでLMSとEC機能を一体化する方法
ShopifyストアにLMSアプリを搭載する
Shopify(ショッピファイ)でECサイトを作成し、ShopifyアプリでLMS機能を追加する方法です。たとえば、Tevello Courses & Communities(テベロ)はテキストや動画などの学習コンテンツの配信や、修了証の発行に対応しています。Courses Plus(コースズプラス)は、テキストや動画での講座作成だけでなく、Zoom(ズーム)やGoogle Meet(グーグルミート)を活用したライブレッスンの開催、他のLMSからのデータ移行などにも対応しています。
- 主な利点:Shopifyの商品管理や決済などのEC機能を利用できるだけでなく、配送サービスとの連携や多通貨での販売などにも対応しやすい
- 注意点:Shopifyの初期設定やLMSアプリの選定などの手間がかかる
- 適している事業者:書籍やキットなど配送が必要な商品の販売や、学習コンテンツの越境ECなど、幅広いビジネスを展開したい事業者
オールインワン型LMSを利用する
講座作成、教材配信、受講者管理、決済などの機能を一貫して提供するLMSを利用する方法です。たとえば、learningBOX(ラーニングボックス)は有料オプションとしてEC機能を提供していて、学習コンテンツの作成、販売、決済を一元管理できます。また、Qualif(クオリフ)はeラーニングビジネス向けのLMSとして、ショップや決済の機能を標準で備えています。
- 主な利点:講座運営と販売に必要な機能がひとつのサービスにまとまっているため、導入や管理の負担を抑えやすい
- 注意点:デザインや外部サービスとの連携などに制限があり、柔軟性や拡張性に欠ける場合がある
- 適している事業者:開発費用を抑えて短期間でeラーニングビジネスを始めたい事業者
API連携構成にする
ECカートシステムとLMSなど、役割の異なるシステムをAPI連携し、必要な機能を組み合わせる方法です。たとえばShopifyは、外部システムとの連携などに利用できる複数のAPIを提供しています。また、LMSのKnowledgeDeliver(ナレッジデリバー)も、APIによる外部システムとの連携に対応しています。これらを連携することで、購入情報をもとに受講者を登録するなど、販売と講座運営にまたがる業務を自動化できます。
さらに、Shopifyはヘッドレスコマース向けのStorefront APIも提供しています。これを利用することで、講座を提供するために構築したウェブサイトやアプリなどに、EC機能を組み込めます。
- 主な利点:ECとLMSなど、用途に適したシステムを選び、デザインや機能、運用方法を要件に合わせて構築しやすい
- 注意点:システム間の連携やカスタマイズに開発が必要となり、構築費用や導入期間、運用後の保守負担が大きくなりやすい
- 適している事業者:既存のECプラットフォームやLMSでは要件を満たせない企業や、独自性の高い学習サービスを提供したい事業者
LMSを利用したeラーニングビジネスの始め方
- 講座のテーマとターゲットを決める:提供できる知識やノウハウをもとにテーマを決め、どのような人に何を学んでもらうかを明確にします。また、類似する講座やターゲットオーディエンスについて調べて、需要が見込めるかを確認します。
- 講座の内容と形式を決める:受講後に身につけてもらいたい知識や技能を整理し、講座の内容や学ぶ順番を決めます。動画やテキスト、ライブ配信など、講座の形式も検討します。
- 利用するLMSを決める:講座の作成や配信、受講者の管理、講座の販売と決済など、運営に必要な機能を整理し、予算に合わせて利用するシステムやサービスを選びます。
- 講座を作成して販売準備をする:テキストや動画などの教材を作成し、LMSに登録します。また、講座の販売ページ、決済、受講ページなどがそれぞれ問題なく機能しているかを確認します。
- 販売を開始してマーケティングを行う:講座を公開し、SNS、広告、SEOなどを活用して集客します。紹介動画やLP(ランディングページ)、ブログ記事などのコンテンツが有効です。
- 販売結果をもとに改善する:売上、受講状況、受講者からのフィードバックなどを参考に、講座の内容や価格、販売ページのデザイン、マーケティング方法などを見直します。改善を繰り返しながら、顧客満足度の向上や売上アップにつなげます。

eラーニングビジネス向けLMSの選び方
事業規模に合わせて選ぶ
- 小規模な事業や立ち上げ期:運営スタッフが操作しやすく、短期間で導入でき、初期費用やランニングコストを抑えられるシステムが適しています。初期投資を抑えながら、学習コンテンツに需要があるかを検証できます。
- 成長期の事業:受講者や講座の数が増えても安定して利用できるシステムが適しています。また、営業や会計など、他部署で利用しているシステムと連携できれば、データ入力や情報共有などを自動化しやすくなります。サブスクなどの幅広い販売方法に対応していれば、さらなる需要を取り込みやすくなります。
- 大規模な事業:運営に関わる担当者や部署が多くなりやすいので、スタッフごとの権限設定や、社内システム用のアカウントでログインできるSSO(シングルサインオン)に対応していると、アカウント管理を効率化しやすくなります。また、海外展開を見据えている場合は複数通貨での決済や各国の税制への対応、複数ブランドを展開する場合は画面デザインを変更できるかなどを確認しましょう。
用途に合わせて選ぶ
- 法人向け研修:受講者の一括登録、進捗や修了状況の管理、社内の管理者向けレポート作成など
- 教育機関向け:成績評価、学期や受講期間の設定、受講者をグループごとに管理する機能、学籍管理システムとの連携など
- 資格取得や専門教育:資格認定や講座修了の証明書発行、継続教育(CE)の単位取得状況や資格更新の管理など
- 複数の講師が講座を販売するマーケットプレイス:講師のアカウント登録、講師用マイページでの講座の登録、売上の分配、レビューなど
講座や教材の提供形式に対応しているかも確認しましょう。たとえば、動画やテキストなどの教材を配信できるか、ライブ配信に対応しているか、既存の教材を取り込めるかなどを確認します。
技術要件を確認する
サービスの安定した運用や事業の成長に合わせた拡張のために、LMSの技術要件も確認する必要があります。主な確認項目は以下の通りです。
- 表示速度や処理性能:ウェブページや動画の読み込みがスムーズかどうか
- セキュリティ:データの暗号化やアクセス権限の設定、操作履歴の記録などに対応しているか
- 外部システムとの連携:APIや外部サービスとの連携機能が用意されているか
- カスタマイズ性:画面デザインや業務の流れを自社の要件に合わせて変更できるか
- 分析機能:受講状況や売上などのデータの確認や出力が可能か
- 利用環境:受講者が利用するデバイスやブラウザなどに対応しているか
あわせて、システムのサポート体制も確認しておきましょう。導入時や運用開始後に必要な支援を受けられる体制があれば、トラブルを未然に防ぎやすくなり、問題が発生した場合も解決しやすくなります。

LMSの今後
AIによるパーソナライゼーション
AIを利用すると、学習の進捗やテスト結果などに応じて、受講者に合わせて学習内容を調整するパーソナライゼーションが可能になります。たとえば、テストの結果を分析して、理解度が低い分野を特定し、その分野に関する教材を自動で追加するといった運用が可能になります。また、受講履歴や学習状況をもとに最適な講座を提案するパーソナライズドマーケティングにも活用でき、学習継続率を高めて売上アップにつなげられます。
また、AIチャットボットを利用して、よくある質問への回答や問い合わせ内容の振り分け、学習計画の案内など、サポートを自動化することもできます。
効率よく学べる仕組みの普及
LMSでeラーニングを提供することで、受講者は自分のタイミングで学習に取り組めます。この特徴を生かした学習方法として、主に以下のふたつが注目されています。
- マイクロラーニング:ひとつのテーマを短時間で学べるよう、学習内容を小さな単位に分ける方法。受講者はスキマ時間を利用して学習できる
- ジャストインタイム教育:必要なタイミングで関連する教材を提供する方法。たとえば、特定の業務を行う直前に短いチュートリアルを案内することで、その場で必要な知識を習得できる
VRなどを活用した体験型学習
VR(仮想現実)とLMSを組み合わせることで、実技や現場での対応が重視される分野でも、自己学習を取り入れやすくなります。現場での作業手順や接客対応などは、文章や動画だけでは学びにくい場合がありますが、VRを利用すれば実際の現場に近い状況を再現できます。
たとえば、松屋フーズでは、LMSを活用したeラーニングとVRトレーニングを組み合わせた研修を実施しています。VRでは接客だけでなく、調理や券売機の操作、混雑時やトラブル発生時の対応なども学べるようにしています。
まとめ
LMSは、教材の配信や受講者の登録など、eラーニングの運営に必要な業務をまとめて管理するシステムです。eラーニングビジネスに取り組む場合は、EC機能を備えたLMSを利用するほか、ShopifyとLMSアプリを組み合わせたり、APIで複数のシステムを連携したりします。
導入するシステムは、事業規模、用途、技術要件などを比較し、予算に合ったものを選ぶことが重要です。AIによるパーソナライゼーションなど、新しい技術も取り入れながら、自社のeラーニングビジネスに適した環境を構築しましょう。
LMSに関するよくある質問
LMSとは?
LMSとは、eラーニングに関する業務をまとめて管理するためのシステムです。
LMSの主な機能は?
- 学習素材の作成や配信
- 受講者の管理
- 学習環境の提供
- 評価や認定
- 指導やフィードバック
LMSとEC機能を組み合わせる方法は?
EC機能を備えたオールインワン型のLMSを利用するほか、Shopifyで構築したECサイトにLMSアプリを組み合わせたり、ECシステムとLMSをAPI連携したりする方法があります。
LMSとEC機能を組み合わせるメリットは?
- 運営業務を効率化できる
- 顧客体験を改善できる
- 販売方法を広げられる
- 購入データと学習データを組み合わせやすい
eラーニングビジネスはグローバルに展開できる?
Shopifyは複数通貨での決済や多言語表示に対応しているため、LMSアプリと組み合わせることでeラーニングビジネスのグローバル展開が可能です。




