ECサイトなどのパフォーマンスを測るeコマース分析は、あらゆるビジネス戦略の土台となります。しかし、株式会社PRIZMAの「情報収集と意思決定に関する調査」では、リサーチを独自に行うマーケティング担当者や経営者のうち、情報が不十分で誤った意思決定をしたことがあると答えた割合は80%以上に上りました。また、それにかかわる課題として多くの事業者が、情報収集を行ってもそのまま意思決定に活かせるデータは見つけられていないと回答しています。
eコマース分析ではやみくもにデータを集めればいいというわけではなく、各指標が意味するものや分析手法を知っておくことが重要です。そこでこの記事では、eコマース分析の目的、実際に使われている指標といった基本知識とともに、成果につながる活用のポイントをわかりやすく解説します。ECサイトの売り上げを伸ばすために、eコマース分析に注力したいと考えている方はぜひ参考にしてください。
eコマース分析の目的

eコマース分析の目的は、売り上げや顧客体験の向上に活かすため、オンラインストアで得られるサイトのパフォーマンスや顧客行動などのデータを集めることにあります。その際にはどんな商品が売れたか、利益はいくらか、といった単純な数字を追うのではなく、顧客データやアクセス情報なども含めて多角的に分析することで、マーケティング施策の改善点や購入プロセスの課題が見えやすくなります。
たとえばある週の訪問者が多くても、その半数が数秒で離脱している場合や、購入手続きの途中で離脱が発生している場合は、導線や購入プロセスに課題があると判断できます。そこでユーザーがアクセスしているデバイスを軸に比較してみると、PCに比べてスマホを利用しているユーザーの離脱率が高いことがわかるかもしれません。行動データの分析を通じて、ユーザーがどこでつまずき、どの部分に改善余地があるかを把握できれば、必要な対策を講じることができます。
eコマース分析のメリット

1. マーケティングデータから自社の現状を把握できる
マーケティングに関わるデータは、Web広告やメール、マーケティングオートメーション(MA)など、さまざまなチャネルから得ることができます。こうしたデータを一元管理できるeコマース分析ツールを活用すれば、指標をリアルタイムで確認できるため、どの施策が成果につながっているのかを迅速に把握し、高い効果を期待できる領域に予算を回せるようになります。
2. トレンドや傾向を見つけられる
ネットショップや広告などのデータをeコマース分析ツールにより連携させることで、たとえば次のような傾向を把握できます。
- チャネル別の訪問者数
- 特定期間におけるユーザー行動
- 繁忙期に特に閲覧されやすいページ
- アクセスに使用されているデバイス
こうした情報は、現状の課題把握だけでなく、将来の需要予測や改善施策の立案にも活用できます。
3. マーケティング施策を最適化できる
クリックなどの顧客の行動データを分析することで、誰がどのコンテンツに反応し、クリックや購入といったアクションにつながったのかを把握できるため、より効果的なマーケティング施策を策定しやすくなります。顧客の興味や反応を正しく理解したうえで、適切なメッセージ設計やキャンペーン方針を決めれば、競合他社より顧客のニーズに応えられるようになり、成果にもつながりやすくなります。
たとえばアパレル商品を販売している場合、SNS広告で使用する写真の種類によって反応が変わることがあります。オフィスで撮影した写真より、街中で撮影した写真のほうがクリック率や購入率が高いという結果が出れば、起用するインフルエンサーや広告のターゲットを見直すなど、次回以降の施策の方向性を根拠をもって決められます。
4. 適切な価格設定に活かせる
価格設定は利益に影響する重要な要素であり、商品ごとに顧客が払ってもよいと考える価格帯が存在します。eコマース分析を活用すると、価格の変化が購買行動にどのように影響するかを把握でき、顧客セグメントごとの反応の違いも読み取れます。これらの情報を基に、収益を最大化するための商品ごとの適切な価格帯を見極めやすくなります。
eコマース分析でまず最初に確認するべき5つの指標

eコマース事業を始めたばかりの起業家は、まず以下の5つの指標から分析を始めてみましょう。
- 顧客生涯価値:顧客生涯価値(CLV)は、顧客が一定期間のあいだに自社にもたらす利益の合計を示す指標です。どの顧客が長期的な収益に貢献しているかを把握できるため、優良顧客の特徴を踏まえて施策を設計しやすくなります。また、新規獲得より既存顧客の維持コストのほうが低いとされているため、予算をどう分配するかの判断基準としても有用です。
- リピート率:リピート率とは、初回購入後に再び商品を購入した顧客の割合を示す指標です。リピート率が高いほど、商品やコンテンツがユーザーに評価されていると判断できます。
- サイト滞在時間:サイト滞在時間とは、ユーザーが1回の訪問でサイトにとどまった時間を指します。滞在が長い場合は、コンテンツに興味を持って読み進められていたり、閲覧にストレスがなく顧客体験が良好である可能性が高いと判断したりしやすくなります。
- 訪問別ページビュー:訪問別ページビューとは、ユーザーが1回の訪問で閲覧した平均ページ数を示します。一般的に、閲覧ページ数が多い場合は商品やコンテンツへの関心が高いと判断できます。
- 直帰率:直帰率とは、ユーザーがサイトを1ページだけ閲覧して離脱したユーザーの割合です。直帰率が高い場合、ページ内容やデザイン、読み込み速度などがユーザーの期待に合っていない可能性があります。
これらの指標のうち、顧客生涯価値を除く数値はGoogle(グーグル)アナリティクスなどの分析ツールで確認できます。特定の指標が想定より低い場合は、ページの目的や導線が合っているかを見直すなど、必要に応じて改善を検討します。改善後はその効果を検証し、課題が解消されているかどうかを判断します。
顧客獲得を効率的に行うための3つのeコマース分析指標

効率的に顧客獲得を行えているかを判断するための主な指標は、次の3つです。
- コンバージョン率:コンバージョン率(CVR)とは、サイトを訪れたユーザーのうち、会員登録や購入などの目的行動に至った割合を示す指標です。コンバージョン率が低いほど、1件の成果を得るために必要なコストや時間が増えるため、特に重要な数値といえます。一般的なECサイトの平均は、1〜3%とされています。
- ページの読み込み速度:ページの読み込み速度が遅い場合、サイトからの離脱率が高まり、コンバージョン率にも悪影響を及ぼします。株式会社ギャプライズの調査によると、ECサイトの読み込みに3秒かかると60%以上の人が「遅い」と感じるとされています。また、4秒を超えると3割以上が購入意欲が低下すると回答しています。
- 顧客獲得単価:顧客獲得単価(CAC)は、1人の顧客を獲得するために要した広告費などの総額のことです。顧客獲得単価が顧客生涯価値を上回ると獲得コストを回収できず、事業として赤字になります。EC事業では顧客獲得にかかる費用の割合が大きいため、顧客獲得単価と顧客生涯価値を定期的に確認し、費用対効果が取れているかを判断する必要があります。
売り上げを伸ばすための4つのeコマース分析指標

売り上げを伸ばすために、次の4つの指標を優先的に確認しましょう。
- 取引数:取引数は、オンラインストアで行われた取引の総数を表す指標です。日次と週次で取引数を増やすように取り組むことが、着実な成長の基本となります。
- 平均注文額:平均注文額(AOV)とは、1回の取引で購入される金額の平均です。まとめ買いを促したり、高単価商品への誘導を強化したりすることで、平均注文額を高められます。平均注文額が上がるほど、同じ顧客数でも売り上げを伸ばしやすくなります。
- 売り上げ:売り上げとは、商品やサービスを販売して得られる総額のことです。特に月次の売上推移は、取引数や平均注文額の改善が事業全体の成長につながっているかを確認するための重要な指標です。売上が継続して増えている場合、施策が成果につながっていると判断しやすくなります。
- ユニークユーザー数:ユニークユーザー数は、サイトに訪れた実際の人数を示し、同じユーザーが複数回訪れても1人としてカウントされます。取引数や平均注文額といった主要指標が維持されていれば、ユニークユーザー数を増加させることも売り上げアップにつながります。ただし、ユニークユーザー数に注力するよりも、成長段階では顧客生涯価値と顧客獲得単価のバランスを保ちながら施策を進めることが重要です。
eコマース分析指標をマーケティング戦略に活かす方法

1. 検索エンジン最適化
検索エンジン最適化(SEO)とは、検索エンジンからの自然検索(オーガニック)流入を増やすための施策です。SEO施策は下記のような指標のeコマース分析をもとに、ユーザーの検索意図を理解し、コンテンツの改善を行っていきます。
- 検索ボリューム:検索ボリュームとは、Googleなどの検索エンジンで特定のキーワードが検索された回数を指します。検索ボリュームの大きなキーワードほど、ユーザーの関心が高いためメインキーワードに設定する価値があります。ただし、競合が多い可能性も高いため、より具体的な組み合わせのキーワード(例:商品ジャンルに「最安値」「徹底比較」などを組み合わせる)を設定するなどの工夫も重要です。
- 平均掲載順位:平均掲載順位とは、対象のキーワードが検索された際に、自社のサイトがどの位置で表示されているかを示す指標です。上位に掲載されるほど、オーガニック検索からの流入が増えやすくなります。10位より下位の場合は、ユーザー流入が著しく下がる傾向にあるため、狙うキーワードの変更やコンテンツの改善が必要となります。
- 直帰率:直帰率とは、ユーザーがページを閲覧して10秒未満に離脱した、あるいはタブやブラウザを閉じてしまった人の割合のことです。直帰率が高い場合、検索経由のユーザーが商品ページや購入導線に進む前に離脱している可能性があるため、ページ内容がユーザーの期待に応えられているか、購入や問い合わせにつながる導線が適切かを見直してみましょう。
- コンバージョン率:コンバージョン率は、自然検索からの訪問者がどれだけ購入や資料請求などの行動に至ったかを示す指標です。コンバージョン率を改善するには、ランディングページから決済までの導線をスムーズにしたり、読み込み速度を改善したりといった施策が効果的です。
- 検索経由の売り上げ:自然検索から発生した売り上げを見れば、SEO施策が収益にどの程度貢献しているかを判断できます。自然検索流入が増えていても売り上げが伸びていない場合、商品ページの情報設計やランディングページの訴求内容に改善余地があると判断できます。Shopify(ショッピファイ)を利用すれば、ストア分析から検索経由の売り上げを確認することができます。
2. 検索エンジン広告
検索エンジン上に掲載する有料広告は、SEOとともに検索エンジンマーケティング(SEM)で重要な施策です。検索エンジン広告の施策では、次のようなeコマース分析指標を活用します。
- 検索ボリューム:検索エンジン広告では、ユーザーの検索意図を理解し、検索需要があるキーワードを選ぶことが重要となります。需要のあるキーワードに広告を出せれば、見込み顧客への接触機会が増え、購入や問い合わせにつながる可能性も高まります。
- クリック単価:クリック単価(CPC)とは、広告がクリックされるごとに発生する費用のことです。クリック単価を高く設定するほど表示されやすくなる「入札」形式の広告プラットフォームが多いため、競合の多いキーワードで成果を出すためには単価が高くなる傾向があります。クリック単価はコンバージョン率とあわせて顧客獲得単価や費用対効果で採算を判断し、成果につながっていない無駄なクリックが多い場合はキーワード設定や広告文、ランディングページを見直しましょう。
- 平均掲載順位:掲載順位が上がるほど広告がより多くの人の目に留まりやすくなり、クリックされる可能性が高まります。入札額や広告品質を改善することで、掲載順位を引き上げられます。
- クリック率:クリック率(CTR)とは、広告が表示された回数のうち、実際にクリックされた割合です。クリック率を高められると、表示回数が同じでも流入数が増えるため、購入や問い合わせにつながる機会を増やせます。クリック率が低い場合は検索意図と広告文のズレや訴求の弱さを疑い、見出しやコピー、提示するベネフィットなど見直す必要があります。
- 直帰率:直帰率が高い場合は、広告の訴求とランディングページの内容が一致していない可能性があります。直帰率を下げられると、購入導線まで進むユーザーが増え、購入や問い合わせにつながりやすくなります。
- コンバージョン率:広告経由で訪問したユーザーが、購入や問い合わせなどの成果に至った割合です。改善する際は、ランディングページの訴求と購入までの流れが途切れていないか、入力の手間や離脱ポイントがないかを確認します。
- 顧客獲得単価:顧客獲得単価(CAC)は、広告経由で1人の顧客を獲得するのにかかった費用です。この数値を見ると、広告が1件あたりの粗利に見合っているか、効率よく顧客を獲得できているかを判断できます。顧客獲得単価が粗利を上回る場合は、入札単価やターゲット、キーワード設定を見直す必要があります。
3. Facebook・Instagram広告
Facebook(フェイスブック)やInstagram(インスタグラム)などのSNSを活用した広告は、ユーザーの興味関心や属性に基づいて商品を訴求できる施策です。購入目的で利用される媒体ではありませんが、ユーザーがアクセスしている時間が長いため、商品を知ってもらうきっかけを作りやすい点が特徴です。SNS広告では、次のようなeコマース分析指標を施策や改善に活用することができます。
- インプレッション数:インプレッション数とは、広告がユーザーに表示された回数を指します。この数が少ない場合、ターゲットを絞り過ぎている可能性があります。関連する興味関心や属性を追加するなど、配信条件を見直して表示回数を増やす必要があるでしょう。
- クリック率:クリック率が低い場合は、広告の訴求やデザインがターゲットに刺さっていない、またはターゲティングがずれている可能性があります。競合の広告も分析して、より目立つ、あるいはターゲットユーザーのニーズに沿った訴求を行えるように工夫する必要があります。
- クリック単価:FacebookやInstagramの広告プラットフォームであるMeta(メタ)広告では、ユーザーの反応や広告の品質も配信とコストに影響し、品質が低い場合はクリック単価が上がりやすくなります。クリック単価が高い場合は同じ予算で獲得できる流入が減ってしまうため、ターゲット設定や訴求を見直します。
- 直帰率:直帰率が高い場合、広告クリエイティブとランディングページの内容が一致していない可能性があります。Facebook広告とInstagram広告は、画像や動画など多彩な広告フォーマットを活用できることも特徴となっているため、広告をクリックした先で得られる情報を、ビジュアル的にわかりやすくする工夫も大切です。
- コンバージョン率:コンバージョン率が高まると、同じ流入数でも獲得数が増え、売り上げを伸ばしやすくなります。キャンペーン別に数値を比べ、低いものはランディングページと広告のメッセージが一致しているか、購入までの導線で離脱が起きていないかを確認します。
- 顧客獲得単価:この数値を見ると、獲得コストが1件あたりの粗利に見合っているかを判断できます。顧客獲得単価が粗利を上回る場合は、広告内容やターゲット、配信設定を見直す必要があります。
4. メールマーケティング
メールマーケティングは、見込み顧客と既存顧客に対して、商品やキャンペーンの情報を届ける施策です。購入後のフォローや再入荷の案内などを適切なタイミングで配信することで購入を促し、売り上げにつなげます。eコマース分析でメールマーケティングの効果を高めるには、以下の指標に注目しましょう。
- メール購読者数:メールを受け取ってくれる見込み顧客・既存顧客の数は、メールマーケティングの基盤となります。購読者数を増やすためには、会員登録に対するクーポンの発行や、役立つ情報を定期的に発信するメルマガなどの施策が効果的です。
- メール経由の売り上げ:配信しているメールが購入にどの程度つながっているかを示す指標です。売り上げが伸びない場合は、提案している商品や訴求が購読者の関心とずれている可能性があります。件名や内容、配信のタイミングを変えて反応を比較し、購入につながるパターンを見つけていきましょう。
- 訪問者のメール登録率:サイト訪問者のうち何%がメール登録に至ったかを示す指標です。登録率が高いほど、購入につながる可能性のある見込み顧客を獲得できていると判断できます。登録率はフォームの設置位置や訴求内容で変わるため、登録するメリットを明確に示せるように心がけましょう。
- 購読者のコンバージョン率:購読者のコンバージョン率は、メールを受け取った人が購入などの成果に至った割合です。数値を改善するためには、メールのデザインや内容、紹介する商品のラインナップを工夫し、購読者が「買いたい」と思える状態をつくることが必要です。
- 開封率:開封率は配信したメールがどれだけ読まれているかを示す割合で、一般的な目安は20〜40%とされています。開封率が上がると商品やキャンペーンを見てもらえる機会が増え、売り上げにつながりやすくなります。開封率を高めるためには、件名に「○○をお探しの方」などメールが送付された理由を入れる工夫や、ユーザーの行動に合わせた配信タイミングの調整(商品をカートに入れてから数日経っても決済されていない場合など)が効果的です。
- クリック率:メール内のリンクがどれだけクリックされたかを示します。クリック率を改善するには、購入履歴や会員データをもとに送付するメール内容を変えるなどの施策が有効です。
- 解約率:メールの購読を解約してしまう人が多い場合は、配信内容や頻度が購読者の期待と合っていない、または配信対象が広すぎる可能性があります。メルマガなどを解約する理由の上位には、「自分に関係ないメールが送られてくることが多すぎる」といったものがあるため、開封率やクリック率を高める施策とともに、配信頻度を抑えることも検討してみましょう。
eコマース分析を成功させるための4ステップ

1. 事前に目的を設定する
eコマース分析を始める前に、達成したいマーケティング目的を明確にすることが欠かせません。目的がはっきりしていれば、チーム全体が同じ方向に動きやすくなり、KPIの達成にもつながります。事業全体の目標と結びついていることが重要となるため、自社で最も利益を生みやすい分野はどこなのかを起点に考えると、方向性が定まりやすくなります。
たとえば、次のようなマーケティング目的が挙げられます。
目標を設定する際は、「SMARTフレームワーク」を活用しましょう。SMARTとは、Specific(具体的)、Measurable(測定可能)、Achievable(達成可能)、Relevant(関連性)、Time-bound(期限)の5要素で構成されるフレームワークです。
2. 現状を分析する
eコマース分析の各指標について、現在のデータを収集します。このデータが、今後の施策の成果を測るベンチマーキングの基準となります。
たとえば11月にSEO施策を強化する場合、その前の10月のページビューや平均滞在時間、直帰率などの数値を基準に、施策実行後の効果を測ります。また、広告施策であれば、前回のクリック率やクリック単価をベンチマークとして活用します。重要なのは、比較する指標と期間を明確にし、変化を正しく把握できる状態をつくることです。
3. データに基づき施策や戦略を最適化する
eコマース分析を通じて現状を把握したあとは、どの指標を改善していくべきか、戦略を立てていきます。ECのマーケティングでは、広告の出稿方法や使っているチャネル、訴求内容、クリエイティブなど、さまざまな要素が売り上げや利益に影響を与えます。そのすべてに予算や人手といったリソースを割くことは現実的ではないため、優先順位を決めることが重要です。
自社のデータだけではなく、業界平均や競合分析で得られた数値とも比較することで、課題や改善効果の高いポイントが見つかりやすくなるでしょう。改善策や戦略を具体化するための方法には、次のようなものもあります。
- 広告文やクリエイティブ、ランディングページをA/Bテストで比較し、反応がよいパターンを見つける
- チャネルごとの成果を見て、最も効果の高い媒体に予算を再配分する
- シミュレーションや小規模テストを行い、最適なリソース配分を判断する
4. eコマース分析と改善を繰り返す
施策を実行した後は、再びeコマース分析を行って指標の変化を比較することで効果を確認します。得られた結果をもとに施策の調整を繰り返していくことが、売り上げアップにつながります。
eコマース分析を日常的に繰り返しやすい方法として、週次でのデータチェックがあります。週の始めに主要な指標を確認し、改善が必要な項目を洗い出します。たとえば、同業他社や前週と比べて平均ページ読み込み速度が遅いとわかれば、改善を優先すべきだと判断できます。
eコマース分析で起こりがちな失敗

eコマース分析を行う際に、ありがちな失敗は以下の4つです。
- データの不整合:複数のチャネルからデータを収集すると、形式や計測基準が異なるため、分析が難しくなることがあります。データを同じプラットフォームに統合することで、分析の精度と効率を高められます。
- データプライバシーの不備:顧客データの取り扱いに問題があると、法的リスクが発生するだけでなく、顧客からの信頼を損なう可能性があります。安全なデータ保管方法を採用し、定期的にコンプライアンスを確認することが欠かせません。
- データ品質の低下:情報が古い、間違っている、欠損しているといった品質の低いデータを活用してしまうと、適切な分析結果を得られず、判断を誤る原因になります。正確な分析を行うためには、定期的なデータチェックやクリーニングが必要です。
- チェリーピッキング:チェリーピッキングとは、特定の結論に都合のよいデータだけを採用し、そのほかのデータを無視してしまうことです。このような分析では、全体像を誤って捉えてしまい、適切な施策判断ができなくなる可能性があります。
こうした失敗を防ぐことで、ECサイトのKPIの精度や分析の効果を高められます。
まとめ
多くのEC事業者が思うように成果を伸ばせない原因は、努力不足ではなく取り組むべきポイントを誤ってしまうことにあります。重要なのは、事業のフェーズごとに重視すべき指標を理解し、そのデータを基に利益につながる改善を行うことです。分析ツールを活用すれば、指標の変化を正確に把握でき、より迅速で適切な意思決定が可能になります。
eコマース分析に注力したい方には、Shopifyがおすすめです。Shopifyのオンラインストアにはレポートや分析の機能が標準で備わっており、アクセス数やコンバージョン率、平均注文額といったデータを確認できます。数字を踏まえて次の施策を検討できるほか、事業者の目的に合わせてレポートをカスタマイズすることも可能です。無料体験も実施していますので、ぜひShopifyを使ってみてください。
eコマース分析に関するよくある質問
eコマース分析で扱う主なデータとは?
- 顧客データ
- 競合情報
- 市場調査データ
- 取引データ
- 顧客からのフィードバック
- ユーザーの興味・関心に関するデータ
eコマース分析のメリットは?
eコマース分析を行うと、ビジネスの現状を正確に把握し、将来的な予測を立てられるようになります。また、売れ行きの傾向を把握したり、顧客の行動データを生かしたり、価格設定を見直したりと、EC運営で必要な判断に役立ちます。
eコマース分析の結果をどう活用する?
eコマース分析の結果は、次のような判断に役立ちます。
- 消費者がどのように行動するかを予測する
- 施策ごとのROI(投資対効果)を確認する
- 次に実行すべき施策を決める
- どの施策が成果につながったかを把握する(アトリビューション分析)
文:Yukihiro Kawata





