マーケティングとは、企業が自社ブランドの価値を高め、売り上げを伸ばすために行う一連の活動です。具体的には、市場分析やユーザーリサーチをはじめ、コンテンツ制作やプレスキットの活用、広告施策など、幅広い業務がそこに含まれます。そのため、企業側からアプローチするアウトバウンドマーケティングと、顧客が自らアクセスするよう促すインバウンドマーケティングの違いや、それぞれのマーケティングチャネルについて理解したうえで、戦略的に取り組んでいくことが重要です。
そこで本記事では、基本的なものから先進的なものまで、幅広い観点で18種類のマーケティング手法をわかりやすく紹介します。
1. マスマーケティング
マスマーケティングとは、不特定多数の消費者に対して同一のメッセージを広く届けることで、潜在顧客を見つけ出すマーケティング手法です。顧客の関心有無にかかわらず、企業側から一方的に情報を発信するアウトバウンドマーケティングの一種になります。そのため、主な目的は商品やブランドの認知度向上にあります。
代表的な手段としては、テレビ・新聞・雑誌などのマスメディア広告をはじめ、チラシやパンフレットの配布、ビルの壁面・屋上広告や交通広告、店舗看板、ベンチ広告などが挙げられます。また広告以外には、マスメディアに向けてプレスキットを送付し、記事などでとりあげてもらうといった方法もあります。
2. ダイレクトマーケティング
ダイレクトマーケティングは、メールや郵便などを通じて一人ひとりの顧客とコミュニケーションをとり、商品やサービスの購買につなげるアウトバウンドマーケティング手法です。これらの手法では単純な情報提供にとどめず、キャンペーンページへのリンクといった行動喚起(CTA)や、割引クーポンをつけることで、購買などにつなげることができます。
具体的な例としては、自社が保有する膨大な顧客データを活用し、一人ひとりに最適化されたダイレクトマーケティングを展開しているAmazon(アマゾン)が挙げられます。購入履歴や閲覧履歴をもとにしたメール配信、プライム会員向けの限定セール、関連商品のレコメンドメールなどを通じて、購買意欲を高めています。
3. 口コミマーケティング
口コミマーケティングは、購入者や利用者が感じた商品・サービスの感想やレビューを活用し、コンバージョン率の向上やブランド・商品の認知拡大を図るマーケティング手法です。実際の利用者による評価は信頼性が高く、企業やブランドが訴求する価値の裏付けとなるため、購買意思決定に大きな影響を与えます。
特に、SNS上で利用者が自発的に投稿するレビューやおすすめ情報などのユーザー生成コンテンツ(UGC)は、広告感が薄く、自然な形で商品やサービスの認知拡大や購買促進につながります。また、思わず「誰かに共有したくなる」ような体験やコンテンツを提供する手法も効果的です。人から人へと情報がウイルスの感染(バイラル)のように連鎖的に広がるため、「バイラルマーケティング」と呼ばれます。
4. テレマーケティング
テレマーケティングとは、電話を通じて潜在顧客に商品やサービスの案内や販売促進を行う、ダイレクトマーケティングの一つです。顧客と直接対話できるため、メールやSNSと比べて反応を把握しやすく、リアルタイムでフィードバックを得られる点が特徴です。購買促進だけでなく、顧客満足度の向上やニーズの把握、サービス改善に向けた情報収集にも活用されています。
5. ゲリラマーケティング
ゲリラマーケティングは、驚きや強いインパクトのある演出を通じて、高い話題性や注目を集めるマーケティング手法です。特に、事前告知などを行わずに実行されるオフライン施策を指し、ブランドや商品の認知度向上、顧客獲得を狙います。SNSでバズることで、比較的低コストでも投下した予算以上の効果を得られる可能性があります。
株式会社カネボウ化粧品は、洗顔料やクレンジングなどを展開するブランドのsuisai beauty clear(スイサイビューティクリア)のリニューアルに伴い、東京メトロ新宿駅構内でゲリラ的なサンプリング施策を実施しました。壁面にサンプルと応援メッセージを掲示し、ターゲットである社会人女性の通勤中を狙って商品体験の機会を提供した結果、午前中で配布が終了し、SNS上でも話題を獲得しました。
6. イベントマーケティング
イベントマーケティングとは、セミナー(ウェビナー)、展示会、業界イベントなどを実施するインバウンドマーケティング手法です。申込制のイベントとすることで、潜在顧客の情報を取得できるほか、アンケートを通じてニーズや関心の高いテーマ、改善点などを把握することができます。
展示会やポップアップイベントは、商品やサービスを実際に体験してもらう体験型マーケティングとして特に効果的です。
7. O2Oマーケティング
O2Oマーケティングとは「Online to Offline」の略で、ウェブサイトやSNSなどのオンライン施策を通じて、実店舗やイベントといったオフラインの行動へ誘導するマーケティング手法です。
たとえば、オンライン上でクーポンや特典を配布し、店舗での利用や受け取りを条件とすることで、来店促進や購買行動につなげます。
8. データマーケティング
顧客の行動や市場の変動を数値化して、感覚ではなく客観的な指標のもとで企画や施策を行っていくマーケティング手法です。たとえばECサイトであれば、訪問数や購買数、顧客へのアンケート結果などを継続的に収集し、数値が向上していくように改善を重ねていきます。またデータマーケティングを行う際には、各指標の改善目標となるKPIを設定しておき、施策によってどのように数値が変化したかを記録していくことも重要です。
9. 検索エンジンマーケティング(SEM)
検索エンジンマーケティング(SEM)とは、自社サイトを検索エンジン上で見つけやすくするためのマーケティング施策です。主に、オーガニック検索(自然検索)からの流入を狙うSEO(検索エンジン最適化)と、リスティング広告などの有料広告施策を組み合わせて実施します。

有料広告は、特定のキーワードが検索された際に検索結果の目立つ位置へ広告を掲載し、サイトへの流入増加を図ります。課金方式は、クリックされた回数に応じて費用が発生するクリック課金型が一般的です。
広告費のかからないSEOと有料広告を併用し、A/BテストやPDCAサイクルの運用を通じて継続的に改善することで、コンバージョン率の向上やブランド認知の拡大を目指します。
10. モバイルマーケティング
モバイルマーケティングとは、スマートフォンやタブレットなどのモバイル端末を通じて顧客にアプローチするマーケティング手法です。特に、ユーザーの行動や位置情報に合わせた、リアルタイムかつパーソナライズされたアプローチを可能とする特徴があります。
具体的には、アプリ内広告や自社アプリを通じた情報配信、メールやSMSによるタイミングを意識した通知の送信、Bluetooth(ブルートゥース)機能やiBeacon(アイビーコン:英語)を活用した特定範囲にいるユーザーへのクーポンの配信、QRコードの読み取りによる特典提供などが挙げられます。
11. パフォーマンスマーケティング
パフォーマンスマーケティングは、ユーザーによる広告クリックや購入といった特定の成果が出た場合のみ費用が発生する、成果報酬型広告を活用するデジタルマーケティング手法です。
成果に連動して費用が発生するため、広告効果を可視化しやすく、無駄なコストを抑えた運用が可能です。そのため、リスクと費用を抑えながら広告運用を行いたいスタートアップ企業や、予算に限りのある中小企業に向いています。
12. コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングは、顧客やユーザーが求める有益な情報をコンテンツとして提供することで、信頼関係を構築していくマーケティング手法です。商品やサービスを直接的に売り込むのではなく、効果的な使い方やメリット、ベネフィットを伝えることで、自然な流れで商品やサービスへの理解や関心を高めていくことが目的となります。コンテンツマーケティングに役立つ媒体としては、ブログやメルマガ、ポッドキャストなどが挙げられます。
ブログ
ブログは、コンテンツマーケティングの代表的な手法の一つです。商品やサービスの解説、ユーザーが抱きやすい疑問点を解消する記事など、有益な情報をテキスト中心で発信します。自然な形で購買行動につなげやすく、動画などのマルチメディア施策と比べて低コストで運用できる点が特徴です。
たとえば株式会社カカクコムが運営するライフスタイルメディアのキナリノでは、ファッションや生活雑貨、グルメ、美容、旅行など幅広いジャンルの記事を発信しています。スタイリストのコーディネートや暮らしのアイデアを紹介するとともに、連動するECモールの商品ページへの導線やお気に入り追加といった、ユーザーが興味を持ったらすぐに購入できる仕組みが備わっています。Instagram(インスタグラム)でも50万人以上のフォロワーを獲得しているなど、SNS運用も含めたマルチチャネルのコンテンツマーケティングに成功しています。
ポッドキャスト
ポッドキャストは音声のみで配信されるコンテンツで、特定の人物やサービスの認知向上に効果的な手法です。たとえば、ビジネスアナリストが定期的にポッドキャストを配信し、専門的な知見やアドバイスを提供するといった手法は、リスナーから信頼を集めるのに効果的です。こうした取り組みの積み重ねが、講演依頼やオンライン講座など、有料サービスや収益性の高いビジネスへ発展する可能性があります。
13. 動画マーケティング
動画マーケティングは、YouTube(ユーチューブ)やTikTok(ティックトック)などのプラットフォームを活用する、コンテンツマーケティングの一種です。音声と視覚が組み合わさることで、商品やサービスの魅力を伝える情報量が増え、訴求力が高い点が特徴です。
家具ブランドのLOWYA(ロウヤ)は、SNSを集客の中核に据え、ショート動画に重点を置いた動画マーケティングを展開しています。特定のニーズに応える独自のニッチ商品を開発し、その活用方法をまとめた短尺の商品紹介動画により、多くのヒット商品を生み出しています。
14. SNSマーケティング
SNSマーケティングは、InstagramやX(エックス)、YouTube、TikTokなどのソーシャルネットワークを活用したインバウンドマーケティング手法です。SNSは無料で運用を始められるため、ブランドや商品の認知向上、販売促進、ブランディングのための手軽な情報発信ツールとして、多くの企業が公式アカウントを開設しています。
SNSでは、ユーザーの属性データや投稿の反応(エンゲージメント)を分析し、マーケティング施策に活かすことが可能です。また、ユーザーが口コミや紹介、ハッシュタグを通じて自発的に情報を拡散する効果も期待できます。
さらに、各プラットフォームで提供されている有料のSNS広告を活用することもできます。たとえばインスタ広告では、ユーザーの興味・関心や行動履歴にもとづき、フィードや発見タブに自然な形で広告を表示できるため、効率的なターゲティングが可能です。
15. インフルエンサーマーケティング
インフルエンサーマーケティングは、SNSやブログなどのオンラインメディアにおいて、多くのフォロワーや読者を持つインフルエンサーを起用し、商品やサービスを紹介してもらうことで購買や認知拡大につなげるマーケティング手法です。
インフルエンサーは特定の分野やテーマに特化して活動しているケースが多く、商品やブランドとの親和性が高いインフルエンサーを選定することで、ターゲット層へ効率的に訴求できます。さらに、インフルエンサーは日頃から情報発信を通じてフォロワーや読者との信頼関係を築いているため、紹介する商品やサービスに対して高い関心を集める可能性が高くなります。
株式会社フェリクロスは、子ども用トイカメラのPR施策として、商品イメージと親和性の高い子育て・暮らし系インフルエンサーを起用しました。インフルエンサーがインスタストーリー上で10%オフクーポンを配布することで、購買意欲の向上を図っています。また、フォロワー数だけでなく、男女比率や保存数、リーチ数といった指標を重視してインフルエンサーを選定した点も、施策成功の要因といえます。
16. メールマーケティング
メールマーケティングは、定期的に配信するメルマガや、購入者に感謝を伝えるフォローアップメールなどを活用するマーケティング手法です。ECサイトで商品がカートに入ったまま購入にいたっていない顧客にはカゴ落ちメールを送信したり、過去に購入した顧客に対して上位商品や定期購入の提案を行うアップセルメールを配信したりする方法があります。
メールマーケティングは導入ハードルが低く、顧客属性や行動履歴に応じたパーソナライズ施策にも適しているため、継続的な顧客関係の構築が可能です。また、開封率やクリック率といった指標による効果測定も行えるため、比較的はじめやすいパーソナライズドマーケティングの一つといえます。
クックパッド株式会社は、国内最大級の料理レシピサイトを運営し、厳選したレシピ情報を会員向けにメール配信しています。食品メーカーとのコラボ企画やレシピコンテストなど、付加価値の高いコンテンツを提供することで、メルマガ購読者数の拡大に成功しました。現在では、月間利用者数が5,000万人超のメディアを支える重要なマーケティング手段として機能しています。
17. ニューロマーケティング
ニューロマーケティングは、脳科学の知見を用いて消費者の心理や行動原理を分析し、マーケティング施策に活用する手法です。消費者の無意識下の反応を可視化・言語化し、感情の変化や意思決定プロセスにもとづく客観的な意思決定をサポートします。
たとえば、新商品の開発であれば、異なる2種類のパッケージデザインを用意し、それぞれを目にした被験者の脳の活動を計測します。その結果から、より高い反応を示したデザインをパッケージとして採用することで、店頭に並んだ際の印象をコントロールすることができます。ただし、ニューロマーケティングの調査には、MRIなどの高度な計測機器や専門的な知識が必要となるため、導入のハードルが高い点には注意が必要です。
18. コーズマーケティング
コーズマーケティングは、商品やサービスの購入が寄付などの社会貢献につながることを訴求するマーケティング手法です。ブランドは競争優位性を高めながら、同時に社会貢献も実現できる点が特徴です。定義上、コーズマーケティングはCSR(企業の社会的責任)の一形態であり、企業と非営利団体が連携し、相互に価値を生み出す取り組みを指します。
企業が自社の理念や価値観と親和性の高い社会課題の解決を支援することで、社会的価値の創出と事業目標の達成を両立できます。
まとめ
マーケティング手法には、ウェブマーケティング、コンテンツマーケティング、SNSマーケティング、イベントマーケティングなど、さまざまな種類があります。それぞれ得意とする目的や役割が異なるため、自社の課題や目標に応じて適切に使い分けることが重要です。
また、ひとつのマーケティング施策だけ実行するのではなく、複数のチャネルを組み合わせることで相乗効果が生まれ、成果につながりやすくなります。自社のターゲット、事業フェーズ、予算、運用体制を踏まえたうえで、最適なマーケティング戦略を設計し、継続的に改善していきましょう。
マーケティングの種類に関するよくある質問
マーケティング手法の一覧は?
幅広い観点を網羅したマーケティング手法の一覧は以下のとおりです。
- マスマーケティング
- ダイレクトマーケティング
- 口コミマーケティング
- テレマーケティング
- ゲリラマーケティング
- イベントマーケティング
- O2Oマーケティング
- データマーケティング
- 検索エンジンマーケティング(SEM)
- モバイルマーケティング
- パフォーマンスマーケティング
- コンテンツマーケティング
- 動画マーケティング
- SNSマーケティング
- インフルエンサーマーケティング
- メールマーケティング
- ニューロマーケティング
- コーズマーケティング
ブランドマーケティングとは?
ブランドマーケティングとは、消費者とブランドとの長期的な関係性や信頼を構築していくマーケティング手法です。顧客に対して一貫したメッセージや体験を提供することで認知を高めていき、さまざまな機会に顧客からブランドや商品を思い出してもらえるように働きかけていきます。
企画・マーケティングとは?
企画・マーケティングとは、新商品開発や既存商品の改良に必要な情報を収集・分析し、その結果をもとに戦略や施策を立案する業務です。企業の商品戦略や事業成長の根幹を担う重要な役割を果たします。
通販マーケティングに効果的な施策は?
通販マーケティングに効果的な施策は以下の6つです。
- SNSマーケティング
- ウェブ広告
- SEO
- メールマーケティング
- マスマーケティング
- オフラインマーケティング(展示会やイベントなど)
文:Momo Hidaka





