スマホやネットの普及により、Amazon(アマゾン)をはじめとするECが広く利用されるようになりました。オンラインでの購入しやすさを追求したD2C(Direct to Consumer:消費者直接取引)も浸透し、便利でスムーズな買い物が当たり前になっています。
こうした変化を受けて、B2B(企業間取引)でも取引時の使いやすさが重視されるようになっています。発注のしやすさや情報の見やすさを備えたBtoB ECサイトは、取引先から選ばれやすくなります。BtoBマーケティングにおいても、D2Cの考え方を取り入れた販売設計が求められています。
本記事では、B2BにD2C戦略を採用するメリットや、具体的な活用方法を解説します。B2Bの売り上げを伸ばしたい企業は参考にしてください。
B2BにおけるD2C戦略とは
B2BにおけるD2C戦略とは、企業間取引においても、D2Cビジネスのような購買体験を提供する取り組みを指します。B2B企業やブランドがECサイトを用意し、サプライヤーなどを介さずに、顧客へ直接商品やサービスを販売します。
それぞれのECをひとつのサイトで管理できるツールもあります
B2BにD2C戦略を採用する4つのメリット
1. CVRとリピート率を高める
B2BにD2C戦略を取り入れることで、顧客が発注までにかける手間を減らし、CVR(コンバージョン率)とリピート率の向上が期待できます。
従来のやり方では、見積もり依頼、在庫確認、担当者とのやり取りが発生し、発注までに一定の時間を要します。FAXで注文を受け付ける場合は、さらにやり取りが増えます。手順が増えるほど顧客の負担は大きくなり、発注意欲の低下や、より手軽に注文できる競合への乗り換えにつながるリスクがあります。
一方、オンライン上で商品情報、価格、在庫状況をすぐに確認できる環境を整えると、顧客はその場で購入を検討し、発注まで進められます。結果として、CVRの向上につながります。
さらに、パーソナライゼーションや割引、ワンクリックでの再注文機能、モバイルデバイスに最適化されたUIなどを提供することにより、利便性はより一層高まります。再訪問・再注文の心理的なハードルが下がり、リピート率の向上にもつながります。
2. 業務効率を改善しコストを削減する
D2Cの仕組みを整えることで、購買プロセスの大部分を自動化でき、業務効率の改善が見込めます。
顧客自身がサイト上で必要な情報を確認し、発注まで完結できるため、企業側の対応工数は減少します。これにより、人件費の削減や社内リソースの最適化が可能になります。たとえば、担当者は新規顧客の獲得や顧客関係の構築といった、より付加価値の高い業務に集中できるようになります。
また、注文受付、在庫管理、決済処理などがシステム上で自動化されることで、手作業による入力ミスや伝達ミスのリスクも抑えられます。さらに、データや履歴はすべてサイト上に記録されるため、業務の属人化を防ぎ、引き継ぎもしやすくなります。
3. スケーラブルな販売体制を構築できる
D2Cはオンライン上で注文を受け付けるため、時間や場所の制約が少なく、顧客の需要や事業の成長に合わせて販売体制を柔軟に調整できます。
従来のB2B取引は、顧客とのやり取りを営業担当者や代理店に依存していました。そのため、対応できる取引先の数や地域、営業時間に限界があり、事業拡大のボトルネックになっていました。
一方、DtoCモデルなら、サイトにアクセスしたユーザーがリードとなります。商品ページやブログ記事などの注文を後押しするコンテンツを充実させ、オーガニックトラフィックを増やすことで、より多くのリードを獲得できます。また、ウェブ広告を活用すれば、短期間で流入や売り上げを伸ばすことも可能です。
さらに、表示言語、取り扱い通貨、配送対応を整備することで、海外の取引先にも対応できます。
4. 顧客体験の差別化により競争優位を確立する
D2Cの優れた購買体験は、それ自体が信頼感や安心感を生み、ブランドや企業への評価を高めます。その結果、取引先として選ばれやすくなります。
バイヤーにとって、商品や価格だけでなく、「どれだけ発注しやすいか」も重要な判断材料です。D2Cでは、クレジットカードによる手軽なチェックアウトや、迅速で追跡可能な配送など、現代のニーズに合った仕組みを提供します。こうした使いやすさは、従来の慣習を続けている企業との差別化につながります。
さらに、顧客と直接つながれるため、フィードバックを集められます。寄せられた意見をもとに、サイトの導線、価格設定、カスタマーサポートなどを見直せば、より利用しやすい環境を整えられます。その積み重ねが満足度の向上につながり、競争優位を築きやすくなります。

B2Bで活用できる5つのD2C戦略
1. ブランディングとストーリーテリングに取り組む
ブランディングとストーリーテリングを活用することで、B2B企業が持つブランドの魅力をより効果的に伝えられます。仕様や価格以外の価値を顧客に示せるため、競合との差別化が難しい場合でも、選んでもらいやすくなります。
D2Cでは、ブランディングとストーリーテリングにおいて、以下の要素を重視しています。
- 顧客が得られる成果を明確に示す
- 製品の背景やこだわりを伝える
- 実績や数値で信頼性を補強する
たとえば、段ボール用のカッターを販売する場合、「作業がはかどり、負担が軽くなる」といった成果をシンプルに提示します。そのうえで、刃の素材や形へのこだわり、開発チームの取り組みを紹介します。さらに、導入企業数やユーザーの声を掲載することで、安心感や信頼につなげられます。
2. 購買プロセスをシンプルにする
購買プロセスを分かりやすくすることで、取引先が発注しやすくなり、判断の先送りも防ぎやすくなります。B2Bの取引では、カタログ請求、個別の見積もり、価格交渉などが発生しやすく、発注までの工程が増えがちです。必要な情報を分かりやすく整理し、少ない手順で注文できるようにしましょう。
D2Cでは、主に以下の方法で顧客の負担を減らしています。
- サイトに必要な情報をまとめる
- 割引や納期などの条件を明文化する
- 発注操作をできるだけ簡単にする
たとえば、商品ページに仕様、価格、在庫数など、検討に必要な情報を掲載すれば、問い合わせ前でも判断しやすくなります。大口注文の割引については、注文数に応じた条件をあらかじめ明記しておくことで、個別見積もりの回数を減らせます。ワンクリックでの再注文や、CSVアップロードによる複数商品注文に対応すれば、発注時の入力負担も抑えられます。
3. ファーストパーティデータを活用する
ファーストパーティデータを活用することで、顧客の行動傾向や好みを把握し、ビジネスの意思決定やパーソナライズされた顧客体験づくりに役立てられます。D2Cの強みのひとつは、自社ECサイトやメールマガジンなどを通じて、顧客に関する一次情報を収集できることです。
D2Cにおけるファーストパーティデータの主な活用法は以下の通りです。
- 閲覧履歴に基づいて、最適な商品をレコメンドする
- 購買データから需要の高い商品を特定し、仕入れや開発の根拠にする
- CRM(顧客管理システム)の顧客情報を参照しながらコミュニケーションする
たとえば、顧客がサイトを訪問した際、過去に購入した商品や関連商品をトップページで優先的に表示できます。問い合わせ履歴から興味のある商品や抱えている課題が分かっている場合は、メールや電話などでそれに合った商品や導入事例を案内できます。
4. 決済手段を拡充して購入のハードルを下げる
決済手段を拡充することで、取引先がスムーズに支払いできるようになり、発注の機会損失を防げます。B2Bでは請求書払い、銀行振込、代金引換が中心になりやすく、手間がかかります。取引先の状況に合った、簡単に利用できる決済手段を用意しましょう。
D2Cでは、主に以下の決済手段を組み合わせて利便性を高めています。
- クレジットカード決済
- 後払い決済(BNPL)
- 電子マネー
- PayPal(ペイパル)
- サブスクリプション(定期購入)
たとえば、月末締めの取引が一般的な業界では、後払い決済やクレジットカード決済に対応することで、取引先の支払いサイクルに合わせやすくなります。また、海外取引がある場合は、海外で広く利用されているPayPalを導入することで、決済のハードルを下げられます。さらに、消耗品など定期的に発注が発生する商品では、サブスクリプションに対応することで、都度の支払い手続きを減らし、継続的な取引につなげやすくなります。
5. 顧客との接点を構築する
顧客と直接つながる機会を増やすことで、自社を見つけてもらいやすくなります。テレアポや飛び込み営業だけに頼るのではなく、情報を探している企業が自然にたどり着ける導線を整えることで、見込み顧客と効率よく出会えます。
D2Cでは、主に以下の方法で顧客との接点を構築しています。
たとえば、SNSで情報を発信してフォローを得ることで、継続的な接点となります。専門性の高い商材でも、その分野に精通したマイクロインフルエンサーとコラボすれば、関心の高い顧客へアプローチできます。ウェビナーを活用すれば、リアルタイムで質問に答えながら、商品理解を深めてもらい、信頼関係も築きやすくなります。
B2BにD2Cを取り入れた3つの事例
1. 二六製作所
二六製作所は磁石の加工・販売を行う企業で、公式サイトにEC機能を設けて、個人・法人の両方へ向けて製品を販売しています。
商品ページには、磁石の形状やサイズなどの仕様が細かく掲載されており、カタログとしても機能しています。また、注文数に応じた単価がテーブル形式で表示されているため、大口注文時の価格も事前に把握できます。
会社案内ページでは、創業85年の歴史や主な得意先、メディア掲載実績などを紹介し、安心感につなげています。仕様だけでは違いが伝わりにくい商材でも、ものづくりへの姿勢や企業の考え方をサイト上で示すことで、信頼を構築しています。
2. アースダンボール
アースダンボールは、包装用ダンボール箱の生産および販売を行う企業です。自社ECサイトで個人・法人へ製品を販売するだけでなく、役立つ情報を発信するコンテンツマーケティングにも取り組んでいます。
ブログでは「メール便と普通郵便の違い」や「クラフトテープとは?」など、配送や梱包に関する疑問に答える記事を公開しています。記事ページには関連商品ページへの導線やCTA(コールトゥアクション)も設置し、販売促進につなげています。
アースダンボール公式YouTubeチャンネルでは、様々な形状のダンボールについて、組み立て方や梱包時の使い方を紹介しています。 実際の利用シーンを確認できるため、購入前に製品のサイズ感や扱い方を具体的に把握できます。
3. パソコン工房
パソコン工房は、株式会社ユニットコムが運営する個人・法人に対応したECサイトです。同社が製造・販売するオリジナルブランド「iiyama(イーヤマ)」製品を中心としたコンピューター関連の製品を取り扱っています。
同サイトでは、顧客の属性や利用状況に応じたサービスを利用できるよう、ビジネスご優待会員という制度を用意しています。たとえば、優待会員は売掛(後払い)による取引が可能で、月末締め・翌月支払いといった条件で購入できます。
まとめ
B2Bにおいても、快適で分かりやすい購買体験が求められるようになっています。その期待に応えるには、D2C戦略を取り入れることが重要です。ブランドによる差別化、迷いにくい購買プロセスの設計、顧客の傾向に合わせた提案を進めましょう。
こうした施策を組み合わせることで、顧客は比較から発注までを進めやすくなります。その結果、リードタイムの短縮や売り上げの向上も期待できます。まずは、自社サイトで取り入れやすい施策から始めてみてください。
B2BにおけるD2C戦略に関するよくある質問
B2BにおけるD2C戦略とは?
B2BにおけるD2C戦略とは、企業間取引にD2Cの購買体験を取り入れる考え方です。企業は自社ECサイトを通じて、仲介業者を介さずに取引先へ直接、商品やサービスを提供します。
B2BとD2Cの違いは?
B2BとD2Cの違いは、商品やサービスの販売先です。B2Bは企業が他の企業へ販売する取引を指し、D2Cは企業やブランドが消費者に直接販売するビジネスモデルです。
B2BにD2C戦略を採用するメリットは?
B2BにD2C戦略を採用する主なメリットは以下の通りです。
- CVRとリピート率を高める
- 業務効率を改善しコストを削減する
- スケーラブルな販売体制を構築できる
- 顧客体験の差別化により競争優位を確立する
B2Bで活用できるD2C戦略は?
B2Bで活用できる主なD2C戦略は以下の通りです。
- ブランディングとストーリーテリングに取り組む
- 購買プロセスをシンプルにする
- ファーストパーティデータを活用する
- 決済手段を拡充して購入のハードルを下げる
- 顧客との接点を構築する
文:Hisato Zukeran





